知らなかった。
カミーユ・モラーヌが世を去っていた。1月21日のことだという。
共同通信の訃報を引こう。
カミーユ・モラーヌさん 98歳(フランスのバリトン歌手)
21日、パリ郊外の自宅で老衰のため死去。関係者が22日明らかにした。
1911年、フランス北部ルーアン生まれ。40年にパリのオペラ・コミック座にデビュー。フランス歌曲の第一人者として一世を風靡(ふうび)した。62年、パリ音楽院教授に就任。日本人にも多くの門下生がいる。(共同)
九十八歳の大往生なのだから悲しむのはよそう。ジャック・ジャンセンと並び立つ不世出のペレアス歌いであるとともに、フランス歌曲の正統的な(そして最後の?)継承者でもあった。そのディクシオンの美しさと気品はちょっと比較を絶していた。
幸運にもその歌唱を一回だけ生で聴いたことがある。1993年のことだ。
高齢のため現役を引退していたモラーヌが
八十二歳にして初来日し、リサイタルを催すのだという。『朝日新聞』の記事でその報に接して会場のイイノホールに駆けつけた。案の定すでに席は完売、当日券は一枚もなかった。残念がる小生らに主催者が「もしも立見でもよければ」というので、否も応もなく切符を買った。
当日のプログラムを書き写しておこう。
カミーユ・モラーヌ バリトン・リサイタル
フランス歌曲の夕べ
1993年11月1日(月)
18:30-
東京・霞が関 イイノホール
バリトン/カミーユ・モラーヌ
ピアノ/花岡千春
(曲目)
グノー:
祈り
ヴェネツィア
どこへ行きたいの
ショーソン:
ヘベ
蝶々
シャブリエ:
肥えた七面鳥のバラード
蝉
セヴラック:
梟
仔馬への歌
~休憩~
フォーレ: 『ヴェネツィアの五つの歌』
マンドリン
秘めやかに
グリーン
クリメーヌに
それは恍惚
ラヴェル: 『博物誌』
孔雀
蟋蟀
白鳥
翡翠
珠鶏(ほろほろちょう)
(まだ書き出し)