勉強のための読書は専ら机上でするけれど、愉楽のための読書、読書それ自体が歓びであるような読書は車中でこそ捗るような気がする。
今日はたまたま電車で外出するので読みさしの一冊を持参した。帰りの電車が最寄りの駅に到着するのと同時に読了。洞察力に富んだ秀逸な本である。
末延芳晴
寺田寅彦 バイオリンを弾く物理学者
平凡社
2009
寺田寅彦は学生時代からヴァイオリンを好んで奏し、長じてはかなりの腕前にまで達したそうな。同業のアインシュタイン博士ほどではないにせよ、クロイツェル・ソナタをなんとか弾きこなしたというから、明治生まれの素人としては相当なレヴェルに辿り着いたことになろう。
本書はそうした伝記的事実を丹念に跡づけながら、決して幸福とはいえなかった家庭環境や、青年期の寺田が音楽にどれほど慰められ、生き甲斐を見出したかを縷々検証していく。
(まだ書きかけ)