いやはや、またしても清水の舞台から千尋の谷に突き落とされ、全身打撲で瀕死の大怪我を負ったような状態だ。当分は立ち上がることができない。
届いてみると、なるほど途轍もない大著である。堂々たるニ巻本で立派な箱入り。両手で抱え持つのが辛いほどの重量である。試みに箱に入ったままの状態で測ってみると、縦34.5、横27.8、厚さが 11.3 cm もある。
たかが個人の分際でこれを架蔵するなんて身の程知らず、どうかしている。でも架蔵しないというのも猶更どうかしている。
Детская иллюстрированная книга в истории России 1881-1939
Владимир Ильич студия Самолет
Москва: Улей
2009
「ロシア絵本の歴史 1881-1939」とでも訳せばいいのだろうか。
ボーナスと無縁な身には分不相応と知りつつも、どうしても手にしない訳にはいかなかった。なにしろこれは空前(にして絶後?)の破天荒な出版である。帝政末期からスターリン粛清期まで、半世紀に及ぶロシア絵本の興亡を約500冊の絵本で辿る壮大なアンソロジー画集。図版数は1800、収録画家は190人に及ぶ。
わが「幻のロシア絵本 1920-30年代」展から五年。パリの「ロシア児童書 1917-1945」展から十二年。あるいは偉大なる先達である島多代さんの『ソビエトの絵本 1920-1930』刊行から数えると十七年の歳月が流れている。
本国の露西亜で遂に決定版が出たか、という感慨がじわじわと拡がる。
流石というほかない。これには脱帽だ。
ロシア絵本の嚆矢であるエリザヴェータ・ビョーム(エリーザベト・ベーム)の影絵絵本(1881)から20世紀初頭の「
ミール・イスクーストヴァ(芸術世界)」派に拠ったビリービン、ベヌア、ナールブト、ミトローヒンらの高踏的な民族主義絵本へ、さらには革命期に試みられた「
セヴォードニャ(今日)」グループの手作りリノカット絵本、あるいはリシツキー、シャガールの土臭いユダヤ民話絵本へ。20年代に入ると、同じリシツキーが手掛けた瞠目すべき
スプレマチズム絵本や、
ヴフテマス(高等芸術技術工房)在学中のデイネカらによる斬新な試作絵本が登場する。
歴史的な目配りが周到に行き届いているだけでなく、紹介される作品数がなにしろ半端でない。しかもその殆どが今では目にする機会の乏しい稀覯本ばかり。こうして「第一部」と「第二部」の頁を捲っているだけで立ち眩みがしてくる。
(まだ書きかけ)