何故か眠くならない今宵はもう一枚、声楽を聴いちゃおう。
90年代に注目すべき新譜を量産しながら哀れ短命だったレーベル Collins から続けざまに出た英国歌曲アンソロジーの一枚だ。その仕上がり具合は極上。
"The English Song Series vol. 2"
ウィリアム・ウォルトン:
風*
トリトン**
ビアトリズの歌*
緑林の木の下で**
ダフネ、鍍金した格子越しに、老フォーク卿 ~「三つのファサードの歌曲」*
「恋する無名氏」** ***
「倫敦市長閣下の食卓に供する歌」*
長い鋼鉄草、タンゴ=パソドブレ、俗謡 ~「三つのファサードの歌曲」** ***
ソプラノ/フェリシティ・ロット*
テノール/マーティン・ヒル**
ギター/クレイグ・オグデン***
ピアノ/グレアム・ジョンソン
1996年10月2、3日、1997年5月1、2日、
イースト・フィンチリー(ロンドン)、オール・セインツ・チャーチ
Collins 14932 (1997)
本CDについては(Naxos から出たその再発盤を)かつて「クラシックプレス」という季刊誌で評した短文があるので、それをまるごと引いてしまおう。
十六歳の若書きや映画挿入歌まで動員、少ししかないウォルトンの歌曲を拾い集めた一枚。シュヴァルツコップ初演の歌曲集「ロンドン市長の食卓に供する歌」(1962年)が燻し銀のような光沢。一級の演奏者を揃えたこの Collins 原盤の再発は嬉しい限り。(沼)
百二十五字の字数制限があったので言葉足らずの評だが、久しぶりに再会してみると、どの歌にも英国初のモダニスト、ウォルトンならではの巧緻なウィットが仕込まれていて好もしかった。「ファサード」からの楽曲はどれも詞が難解でサッパリだが、ジャージーな風情は聴くだけで愉しい。それにしてもフェリシティ・ロットは上手だな。