今どき1940年代のイギリス映画音楽に興味をもつような物好きがわが国にどれほど存在するのだろうか。そもそもこの時代の英国映画は戦争に災いされ殆ど輸入されておらず、懐かしさを覚える対象になり得ない。
それでも作曲家がヴォーン・ウィリアムズやウォルトンなら聴いてみようという御仁もおられようが、今日たまたま手にしたディスクはその範疇にも入らない。
"The Film Music of Constant Lambert / Lord Berners"
コンスタント・ランバート:
組曲『商船隊員 Merchant Seamen』(1940)
組曲『アンナ・カレニナ Anna Karenina』(1948)
バーナーズ卿:
『シャンペン・チャーリー Champagne Charlie』(1944)より*
組曲『悪魔と寵児 Nicholas Nickleby』(1947)
組曲『道すがらの家 The Halfway House』(1944)**
ラモン・ガンバ指揮
BBCコンサート管弦楽団
ソプラノ/メアリー・カリュー*
ジョイフル・カンパニー・オヴ・シンガーズ**
2007年9月25、26日、ロンドン、ウォットフォード・コロシーアム
Chandos CHAN 10459 (2008)
ちょっと調べたところ、上記の五作のうち『アンナ・カレニナ』はジュリアン・デュヴィヴィエ監督作品、ヴィヴィアン・リー主演の文芸映画であり、東宝東和が逸早く輸入配給していた。ディケンズ原作の "Nicholas Nickleby"(アルベルト・カヴァルカンティ監督作品)も『悪魔と寵児』として公開されていたことを知った。なので「懐かしさを覚える対象になり得ない」と書いた前言はあっさり撤回せねばならない。
コンスタント・ランバートは英国音楽の近代化の旗手として活躍する傍ら筆鋒鋭い論客としても活躍しており、戦前から大田黒元雄が高く評価し、その音楽論集を翻訳出版していたから、日本でも楽曲はともかく名前だけは知られていた。なのでなにかと気になる人なのである。
小生がこのアルバムにことさら興味を覚えた理由はほかにもある。
コンスタント・ランバートとロード・バーナーズ。このふたりには見逃しがたい共通項があるのだ。
(まだ聴きかけ)