難航していた連載「バレエ・リュスと日本人たち」次回分が漸く仕上がりそうだ。そうとわかるとホッと一息つきたい心持ちになる。久し振りにフォーレでも聴こうか。
ガブリエル・フォーレ:
舞台付随音楽組曲「シャイロック」*
舞台付随音楽組曲「ペレアスとメリザンド」**
ジャン・ラシーヌの雅歌***
レクイエム****
テノール/アンリ・ルゲー*
ソプラノ/フランソワーズ・オジェア****
バリトン/ベルナール・ドミニー****
オルガン/ジャンヌ・ボードリー=ゴダール****
デジレ=エミール・アンゲルブレシュト指揮
フランス放送国立管弦楽団
フランス放送合唱団*** ****
1954年12月、1955年2月、パリ、アポロ座* **
録音年不詳、パリ***
1955年、パリ、サン=ロック聖堂****
Testament SBT 1266 (2002)
LP時代からよく知られていたレクイエムを除けば、アンゲルブレシュトのフォーレ録音は滅多に耳にする機会がなかった。こうして戦後の正規録音(名録音技師アンドレ・シャルランを擁するディクルテ=トンソン社のLP)のすべてがこうして簡便に聴けるのは夢のようだ。しかも音質はこれまで耳にした盤と比較にならぬほど良好なのが嬉しい(とりわけ「レクイエム」)。アンゲルブレシュトは過度に洗練されたフォーレを志向せず、むしろあるがままに一見すると無造作な手つきで音楽を差し出す。そこにえも言われる魅惑がある。名演の誉れ高い「ペレアス」は勿論だが、「シャイロック」がこんなに心に沁みる音楽に聴こえるのは初めてだ。
昔この人が振ったフォーレ唯一のオペラ『ペネロペ(ペネロープ)』全曲の実況録音を聴いたことがある。タイトルロールをレジーヌ・クレスパンが歌った貴重な上演記録である。当時はこれが同曲の唯一のLPだったので、繰り返しかけるうちすっかり魅せられてしまった。パリのINAに保存されているはずのこの音源をどうにかして正規のCDで再び耳にしてみたいものである。