わが貧しいニッポンではバレエ・リュス百周年の花火も狼煙もさっぱり燃え上がらず、ひとり細々と線香花火を散らす小生としては実に寂しい限りなのだが、流石に欧米ではローマやボストンで記念のガラ公演が催され、コペンハーゲン、ハンブルク、ハートフォード、ニューヨークなど各地で展覧会が開かれている模様である、そのいずれの都市にも足を運べないのは残念だが、正直なところどれも「万難を排しても出掛けよう」とまでは思えぬ内容なのだ。まあ悔し紛れでそう言うのだが。
ところがここにきて真打がいよいよ登場したようだ。バレエ・リュスが第二の本拠地としたモンテカルロで七月九日から大掛かりな展覧会が始まっている。
題名が実にふるっている。"
Удиви меня! - Étonne-moi!" という。ディアギレフがジャン・コクトーに飛ばしたという檄、「
私を驚かせてごらん!」なのである。
開催場所はモナコ国立新美術館 Monaco National Musée Nouveau という未知の美術館。HPに概要が記されている(
→ここ)。
この「
私を驚かせてごらん!」について、このHPに懇切にもコクトーの原典が引用されているのでそこから孫引きしてしまおう。
« (...) J’étais à l’âge absurde où l’on se croit poète et je sentais chez Diaghilev une résistance polie. Je l’interrogeais : « Étonne-moi, me répondit-il, j’attendrai que tu m’étonnes. » Cette phrase me sauva d’une carrière de brio. Je devinai vite qu’on n’étonne pas un Diaghilev en quinze jours. De cette minute, je décidai de mourir et de revivre (...) »
僕はまだ愚かしい年齢で自分のことを詩人だと思っており、ディアギレフにいささか反撥を覚えたものだった。僕が質問すると、彼は「私を驚かせてごらん」と応じた。「君が私を驚かせてくれるのを待ってるからね」。この一言が軽佻浮薄な経歴から僕を救いだした。僕はすぐさま悟ったのだ、ディアギレフのような人を驚かすなんて半月では出来っこない。その瞬間から、僕は心に決めた。死んで、そして甦るのだ、と。 ~ジャン・コクトーの手紙(1939)