家人が駅前の貸ヴィデオ店で借りてきたDVDを鑑賞。ほんとはスクリーンで観たいのだけれど、まあ贅沢はいえない。
タロットカード殺人事件
2006
監督・脚本/ウディ・アレン
撮影/レミ・アデファラシン
出演/
スカーレット・ヨハンソン
ウディ・アレン
ヒュー・ジャックマン
イアン・マクシェーン ほか
(口上)
三流マジシャン、シドのショーで「チャイニーズ・ボックス」に入った女子大生サンドラは、幽霊となった新聞記者から世紀のスクープを耳打ちされる。それは、ロンドンを恐怖で揺るがす 〈タロットカード殺人事件〉 の犯人の名前。証拠を摑むため、父娘と偽ってシドと組んで、ピーターに接近を試みたサンドラだが、洗練された英国貴族の彼にたちまち心を奪われてしまう。恋に落ちたサンドラは、もはやピーターを疑惑の目で見ることができない。しかし、そんなある夜・・・。
前作『マッチポイント』に続いて倫敦を舞台にスカーレット・ヨハンソンを主役に据えた作品。今回も上流貴族階級をさりげなく作中に取り込み、ヨハンソンは前作でのファム・ファタールとはうって変わって、ちょっとおっちょこちょいな記者志望の女子大生に扮する。ウディ・アレンはしがない手品師という役どころで登場、ひょんなことから知り合ったヨハンセンと組んで疑惑の青年貴族の身辺を探る。いかにも典型的なずっこけ素人探偵コメディ。現代はずばり "Scoop" という。
倫敦が舞台といっても、先日観た『それでも恋するバルセロナ』のような観光案内めいた風景描写はなく、フラム・ロード界隈やケンジントンのロイヤル・アルバート・ホール付近の地味な街並が映る程度。途中で登場する公園はリージェンツ・パークだろうか。むしろ招かれて赴く郊外の邸館と大庭園がいかにも英国らしい眺めだ。
「ジャック・ザ・リパー」のような娼婦連続殺人が絡む展開ながら、全体のタッチはすこぶる軽妙。同じく素人探偵ものでダイアン・キートンと組んだ旧作『マンハッタン殺人ミステリー』と同工異曲の展開だが、ヨハンソンとのコンビもなかなか息が合って漫才コンビさながら。彼女の演じるキャラクターにキートンやミア・ファローがうっすらと透けてみえるように思うのは小生だけだろうか。
小さなブラウン管でもそこそこ愉しめたが、やはり映画館で観たかった。こういう小粋な作品を時折あちこちのスクリーンで再見できた前世紀の名画座時代が懐かしい。