午後八時過ぎからNHK・BS1で「未来への提言」を観る。今回は雇用形態がもたらす格差を減少させ、「ワークシェアリング」の導入に成功させたオランダ社会に焦点をあて、その立役者であるロデウェイク・デ・ワール Lodewijk de Waal にインタヴューする。
ウィーンに住む友人のBoe君が手掛けた番組で、先日BS-Hi で放映されたものの再編集・短縮ヴァージョンなのだそうだ。
(口上)
世界のキーパーソンに徹底インタビューする「未来への提言」。今回は、長年、オランダ労働組合連合の議長を務め、「オランダ型ワークシェアリング」を築いた功績で世界に知られるロデバイク・デ・ワールさん(59)。
深刻な雇用不安のなか注目を浴びている「オランダ型ワークシェアリング」は、パートタイマーであっても安心して働ける同一労働同一賃金の「均等待遇」政策だ。労働者の雇用を守りながら、企業にも雇用の柔軟性を与え、社会保障を充実させることができる独特のモデルとして、EUはオランダ型政策の導入を各国に指示、ILO(国際労働機関)も「労働時間差別の禁止」の決議に踏み切った。デ・ワールさんたちは、80年代後半、政界・財界・組合がひとつのテーブルについて話し合う雇用改革を進め、「オランダの奇跡」と呼ばれる奇跡的な経済回復を実現した。また1998年には、非正規労働者にも同様の権利を拡大した。
日本では、セーフティ・ネットの綻びが目立ち、非正規雇用の労働者がワーキング・プアに陥る厳しい事態が続いている。21世紀、人間が人間らしく働いていくために必要なものは何か。社会の枠組みそのものを変えていくためには、どんな行動が必要なのか。現在はオランダ反貧困ネットワークの議長として、市民セクターの力を結集しているデ・ワールさんへのインタビューから、雇用の未来を考える。
観ているうちに、これはもう遠いオランダの出来事などではなく、私たちの周りの現実をどう打開するのかという喫緊の問題意識から片時も離れられなくなる。非正規雇用労働者が激増し、その劣悪な待遇や生活不安が蔓延しているのがわがニッポンの重苦しい現状だからである。
過去の経済危機で同種の問題に見舞われたオランダが、どのようにして困難な雇用改革を成し遂げ、正規・非正規労働者の待遇差別をなくしてオランダ型の「ワークシェアリング」を達成したかが紹介される。そのうえで、この国が目指す理想の社会、すなわち適切な「ワーク・ライフ・バランス」を探りながら、ひとりひとりの市民が自分に適した生き方を選択できる社会のありようこそが、日本人にとっても望ましい将来なのではないか、と番組は示唆した。
最後にデ・ワール氏は「信頼 Trust」というキーワードを掲げ、雇用主と被雇用者、正規と非正規の労働者、家庭内では夫と妻、といった具合に、社会の構成員ひとりひとりが信頼しあい、それぞれの間で "win-win" の人間関係を築いていくことが肝腎なのだ、と締め括った。