少しでも部屋を片付けようと不急の本を段ボールに詰めて別室に運んだところで雨になった。近所の食堂で昼食に麦酒を一杯呑んだら俄かに眠気を覚え、帰宅するとそのままへたり込んで夕方まで寝てしまう。起き出しても全身のだるさが抜けない。今夜は早く休もうか。
夕食後、家人がTVで「トニー賞」の授賞式をやるという。つい先日の六月七日、レイディオ・シティ・ミュージック・ホールからの実況録画。
附き合いで観始めたらいきなりプレゼンターにジェーン・フォンダが登場。なんでも彼女自身"33 Variations" なるストリートプレイで四十六年ぶり(!)にブロードウェイに出演、演劇部門の主演女優賞にノミネートされているという。
ちょっと興味を抱いて調べてみたら、その"33 Variations" とは勿論ベートーヴェンの「ディアベッリ変奏曲」のことで、ジェーン扮する音楽学者がこの楽曲の由来を探索するという物語であるらしい(脚本・演出=Moisés Kaufman)。
「アカデミー賞」と違い、ここで俎上に載る舞台とじかに接する機会は限りなく少ないのだが、それでも映画になった『リトル・ダンサー(原題は "Billy Elliot")』や『9時から5時まで』がしきりに取り沙汰され、『ウェスト・サイド・ストーリー』『ヘアー』『パル・ジョーイ』のようなリヴァイヴァル作品が候補に挙げられている。客席にはその『リトル・ダンサー』の作曲家であるエルトン・ジョンの姿もある。
ストレート・プレイの最優秀助演女優賞に八十四歳(!)のアンジェラ・ランズベリーが選ばれ、しかも演目はノエル・カワードの『陽気な幽霊 Blithe Spirit』だというので「ほお」と吃驚した。トニー賞受賞はこれで五度目だという。
けっきょく今年のトニー賞はミュージカル『リトル・ダンサー』が最優秀作品賞をはじめ十部門を獲得して独り勝ち。最優秀主演男優賞はその主人公役が受賞、トリプル・キャストの少年三人が並んで挨拶したのが微笑ましかった。いつかこのミュージカルを見聞する機会があるだろうか。