悲壮な気分で朝起きして書き出した「旅」の連載原稿は、どういうわけか、いつになくすんなり仕上がった。
かつて取り上げたことのある題材の、いわば得意ネタの使い回しの気味もあったのであるが、書き出しも結論も変えてしまった。それにしても呆気ないほど一気に脱稿できたのが我ながら不思議でならない。
編集部から「大急ぎで書いたにしては上出来。とてもいい内容」との評言が返ってきて、そう言われるとむろん悪い気はしない。
これで三日間たて続いた難事がひとまず片付いてホッと一息。なので音楽。
ハイドン:
チェロ協奏曲 ハ長調、二長調
チェロ/アレクサンドル・ルージン
サウリュス・ソンデツキス指揮
リトアニア室内管弦楽団
1982年4月26日、モスクワ(?)
Мелодия MEL CD 10 00940 (2005)
モーツァルト:
交響曲 第三十六番、第三十五番*
ディヴェルティメント K. 136、セレナータ・ノットゥルノ**
イェフディ・メニューヒン指揮
シンフォニア・ヴァルソヴィア*
ローザンヌ室内管弦楽団**
1990年7月、ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ*
1989年8月、ヴヴェ、サル・ド・カスティロ**
Virgin VC 7 59302 2 (1993)
モーツァルト:
交響曲 第三十九番、第四十番、第四十一番
オトマール・スイトナー指揮
NHK交響楽団
1982年12月17日、東京、NHKホール (実況)
キング KICC 3012 (2001)
いずれも今時の古典派演奏スタイルとは遠くかけ離れているが、それでも懐かしさにとどまらない感銘を覚える。統率力をまざまざと感じさせるソンデツキスと、団員の自発性に委ねるメニューヒンとでは流儀がまるで違うのだが、人肌の温かみを感じさせる点では共通する。スイトナーも好感のもてるモーツァルトだが、実演はこんなもんぢゃなかった、もっと溌剌たる閃きと飛翔感があったはず、と少しばかり落胆。