電車を乗り継いで片道二時間。新百合ヶ丘で下車して川崎市アートセンター内の映画館「アルテリオ・シネマ」に辿り着く。
ここで上演中のソクーロフ監督の『チェチェンへ アレクサンドラの旅』に因んで、その主演を務めるガリーナ・ヴィシネフスカヤについて、幕間を使って簡単な解説を試みた。現役時代の映像をちょこっと紹介し、間近に見聞した1971年の来日時の思い出を少しだけ語ったらもうそれで時間切れ。
与えられた半時間では『ガリーナ自伝』に記された波乱万丈の半生について詳述できようはずもないので、予め作成しておいた略年譜を配布するにとどめた。折角なので上映中のフィルムも再見してみたが、眼前のでっぷり肥った老婆があの美貌の歌姫と同じ女性とは、そうと知った今もやはり信じがたい思いだ。この役柄に彼女を起用したソクーロフの真意はどうにも合点がいかないのが正直なところだ。
会場には旧友のK‐1(群馬)、K‐2(世田谷)、M(勝鬨)の三氏がわざわざ馳せ参じてくれた。朋あり遠方より来る、というわけで終了後は今回の世話役の三浦規成さんのお宅に全員で押しかけ、無礼講よろしく盛大に呑みかつ喰らった。
二時間かけて帰宅。さすがに草臥れたが、おちおち休憩なぞしていられない。明日の宇都宮での講演の準備がまだ終わっていないのだ。あせって配布資料やら画像データの配列やらに取りかかる。この泥縄状態をなんとかせねば。あれれ、気がついたらもう深夜。だ、誰か、た、助けてくれえ。