今日(四月一日)から首都圏のJRのすべての駅(二百一駅)のホームから屋外型喫煙所を撤去し、駅構内の完全禁煙化に踏み切ったJR東日本が、早くもその方針の全面撤回に追い込まれる見通しだという。
最新の報道に拠れば、昨年十二月にJR東日本からこの方針が打ち出された直後、愛煙家からの電話が殺到し、「われわれから通勤途中の唯一の愉しみを奪うのか」「キオスクで買った煙草をどこで吸えというのだ」などの抗議メールが数百万通も寄せられて、JRのオンライン・システムがしばしばパンク寸前まで追い込まれたのだという。この一月には、非合法の市民団体「JR駅ホームでの喫煙をやめさせるな!市民連合」(略称「ホ喫連」)が結成されて極秘裏に抗議運動を展開し、一か月間で二千五百万人の署名を集めてJR東日本社長に手渡し、水面下で粘り強く交渉を進めてきた。
「ホ喫連」の織田実代表(仮名/七十六歳)は交渉の場で、「1998年にほぼ全銘柄の煙草が一律二十円ずつ値上げになり、旧国鉄の負債の返済に充てられたのを、われわれ愛煙家は片時も忘れてはいない。国鉄とJRは別組織なので関係ないという論理は盗人たけだけしいといわれても仕方なかろう。われわれはJRから感謝されこそすれ、排斥されたり煙たがられる理由は全くない」と強く主張し、これがJR東日本側の方針を根底から覆したと消息筋は見ている。
いったんホームから撤去された屋外型喫煙所はすでに廃棄物として大半が処分されてしまったため、JR東日本では急遽NTT本社から不要になった電話ボックス数百基の無償提供を受け、それを首都圏の駅ホームの末端に設置する方針という。電話ボックスは密閉度が高いうえ排気筒がなく、喫煙による煙はボックス内に充満するだけなので、「分煙化という観点からみて、煙が飛散する従来の喫煙所の先をいく画期的な試み」と関係者はこの設置に大きな期待を寄せている。
JR東日本ではこのほか、JR東海、JT日本たばこの協力を得て、東海道新幹線に新たな喫煙者専用の特別車両の導入を検討していることも、消息筋の話から明らかになった。これは同新幹線の最後尾に愛煙家のみが乗車できるオリエント急行仕様の豪華客車を連結し、ここで現行の国産煙草の全銘柄を半額で販売する方針なのだという。ただし、JT側では「この導入によって喫煙者同士の受動喫煙が助長され、喫煙者そのものの絶滅が危惧される」と難色を示しており、この特別車両は家畜運搬用の貨車を改造した無蓋車となる公算が大きいとみられる。