足早に九段下駅の階段を駆け上がる。いざ地上に出てみたら、桜は殆ど咲いていないも同然。せいぜい二分か三分といったところ。ようやくチラホラ咲きだしたという木すらある。開花宣言からもう五日も経っているというのに、これはどうしたことであろう。
満を持してはるばる千葉から電車を乗り継いで上京してきたというのに、とんだ肩透かしを喰らってしまった。
でもせっかくここまで来たのだからと、千鳥ヶ淵をそぞろ歩いてみた。先日までやっていた改修工事はさすがに完了し、こざっぱりと整備された。ボート乗り場の辺りには見晴らしのよい展望台までできていたのには吃驚。満開時にはさぞかし人垣ができようが、今日はこんな具合なので人影もまばら。
この分だと、今週末にはまだ見頃にはほど遠く、来週半ばにようやく盛りを迎えそうだ。このところの寒さでは開きかけた蕾も咲くのを躊躇してしまうのだろう。
ふと思い立って戦没者墓苑に花を手向けたあと、半蔵門から英国大使館前を通って堀沿いに歩いて桜田門へ。桜には早すぎたけれど、このあたりのパノラミックな眺めはさすがに素晴らしい。堀の斜面には白や黄の草花が咲き、街路樹には新芽が浅葱色に芽吹いて、早春の情趣をたっぷり満喫できた。
そのまま丸の内に出て、すっかり外観を顕わにした三菱一号館をしげしげと眺め、ふと数ブロック先を見ると、東京中央郵便局の建物が裏側から無残に切り崩されていく現場に遭遇。かつて壊した文化財を苦心惨憺して再建しているさなか、すぐ傍らでは別の文化財を惜しげもなく破壊してしまう。なんという街なのであろうか。
(明日につづく)