というわけで昨日ふと立ち寄った渋谷HMVで何気なく手にした新譜。
"The Truth about Love"
Frances Bourne, mezzo-soprano
James Holmes, piano
Matrix Ensemble
Robert Ziegler, conductor
Rec:
Townhouse Studios, London, 5-7 March 2008
Champs Hill, West Sussex, 29 February 2008
RCA-Sony 88697293432 (2009)
これはなかなかに秀逸な一枚だ。いかにもありがちな両大戦間のカバレット・ソング集なのだが、十三曲収録されたクルト・ワイルがすべて仏蘭西語版なのがまず異色。もともとパリで書かれた「セーヌ哀歌」や「ユーカリ」は当然として、『三文オペラ』や『ハッピー・エンド』のソングも、さらには「セプテンバー・ソング」までが "J'ai peur de l'automne" として歌われるのである!
かてて加えて、ベンジャミン・ブリテンの四曲(有名な「カリプソ」を含む)が特製の管弦楽伴奏版で奏されるのが目新しいし、ボフスラフ・マルティヌーが1921年にプラハのカバレット「赤七亭」のため書いたという三曲が聴けるのもたいそう珍しい(しかもなかなかの佳曲なのである)。
歌唱者フランシス・ボーンはケンブリッジのトリニティ・カレッジとロンドンの王立アカデミーで学んだ人だといい、普段はオペラ出演のほか、バッハのミサ曲、「メサイア」や「ゲロンティアスの夢」を歌っているという「真面目な」歌い手である由。それがここでは水を得た魚(なんとも妖艶な魚だ!)の如くカバレットの歌姫に扮して巧緻に唄う。あまたある同種のアルバム中でも出色の一枚といえようか。