引き続き、ケン・ラッセル監督のBBC時代のTV映画をDVDで観る。
今日は不世出のダンサー、イザドラ・ダンカンの伝記映画。1987年の回顧上映(パルコ劇場)で確かに観ているのだが、もう細部の印象はおぼろげだ。
イザドラ・ダンカンの伝記映画といえば、わが鍾愛のヴァネッサ・レッドグレーヴ主演の『裸足のイサドラ』(カレル・ライス監督作品、1968)の存在があまりにも大きいので、それに二年先行して撮られた本作はたいそう分が悪い。二十年前にスクリーンで観たときも、「なんとまあ品格を欠いた舞姫であることよ」といささか落胆したのではなかったか。
イザドラ: 世界最大のダンサー
Isadora: The Biggest Dancer in the World
64分、モノクロ
BBC、1966年9月22日放映
製作・監督/ケン・ラッセル
脚本/ケン・ラッセル、シューウェル・ストークス
台詞/シューウェル・ストークス
振付/バイス・ベレアーズ Bice Bellairs
美術/ルチャーナ・アッリーキ
撮影/ディック・ブッシュ、ブライアン・トゥファーノ
出演/
ヴィヴィアン・ピックルズ(イザドラ・ダンカン)
ピーター・ボウルズ(パリス・シンガー)
ジャンヌ・ル・バール(ウィルマ)
アレクセイ・ヤヴドキモフ(セルゲイ・エセーニン) ほか
二十一年ぶりに再見して、目から鱗がごそっと落ちた。震えがくるほどの傑作なのである。ケン・ラッセルの洞察と慧眼に打ちのめされた。と同時に、かつてのおのれの鑑賞眼のなさを呪った。
かけた製作費はカレル・ライス作品のおそらく十分の一にも満たないだろうが、出来映えは勝るとも劣らない、どころか、対象への肉薄度では遙かに凌駕していると感じた。どうしてそのことに気づかなかったのだろうか。
(まだ書き出し)