先日九十五歳の高齢で世を去ったジャン・フルネを改めて偲ぼうとして、さしたる音源が手許にないことにハタと気づいた。ちょうどお茶の水に出る序でがあったので、目ぼしい中古CDを手に取ってみた。これまで何とはなしに敬遠してきたのだ。
ベートーヴェン: 交響曲 第三番
ジャン・フルネ指揮 東京都交響楽団
2000年5月23日、東京芸術劇場 (実況)
fontec FOCD 9151 (2001)
ラヴェル: 道化師の朝の歌
ワーグナー: ジークフリート牧歌
ドビュッシー: 遊戯*
デュカ: 魔法使の弟子*
ジャン・フルネ指揮 東京都交響楽団
2002年4月25日、13日*、東京、サントリーホール (実況)
fontec FOCD 9187 (2003)
ラヴェル: クープランの墓*
フランク: 交響曲*
ダンディ: 思い出(管弦楽のための詩曲)
サン=サーンス: 交響曲 第三番
ジャン・フルネ指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団
2001年10月10日、東京、オーチャードホール*(実況)
2001年10月18/19日、10月13日、東京、墨田トリフォニーホール (実況)
ALM Records ALCD-8019/20 (2002)
すべてが名演というわけではない。ちょっとは期待した「遊戯」なぞ、最後まで聴き通すのが悲しくなるような、敏捷さを欠いた凡庸な演奏でがっかりする。不思議なことに、自家薬籠中のフランス音楽よりもドイツ音楽のほうにむしろ滋味掬すべき秀演がある。「エロイカ」と「ジークフリート牧歌」である。繰り返し聴きたくなる。
フランスものに諸手を挙げて歓迎できないのには、オーケストラの反応の鈍さ、木管奏者の音楽性の乏しさなど、その原因はいくつもあろう。ここまで聴いたうちではサン=サーンスの第三交響曲がひときわ印象に残る。効果を狙ったところが全くなく、でも構えは存分に大きくて、しかも嫋々たる余韻を漂わす。こういう演奏、これまでにありそうでなかった。