朝のうちから窓の外の街路が人の声でざわめいている。巻き起こる子供たちの歓声。大人の話声も混じっている。家人が「今日はハロウィーンらしい」と言う。見ると、思い思いに黒い三角帽の魔女や黒猫や修道服の尼僧に扮した一団が列をなして通り過ぎる。少しすると、別の街路から同じような集団が現れる。どうやら近くの公園に落ち合って、なにやら集会をやらかすようだ。
ハロウィーンなど子供の時分には誰ひとり知らなかったと思う。南瓜のお飾りはおろか、名前すら聞いたことがなかった。思うに、大方の日本人はレイ・ブラッドベリの青少年向け小説『ハロウィーンがやってきた』の翻訳(伊藤典夫訳、晶文社、1975)で、その祭りのなんたるかが初めて了解できたのではなかったか。
今ちょっと調べてみたら、万聖節(諸聖人の祝日)の前夜、すなわち10月31日に祝われる All Hallows Eve[n] が訛って Halloween になったという。もとはケルトの新年の祭りだったものにカトリックの典礼行事が混淆し、アイルランドとイングランドでは蕪を刳りぬいた提燈のような灯りを点して祝ったのだという。これがアメリカで南瓜のランタンに変じ、賑やかな仮装行列やら "Trick or treat!" の掛け声やらが加わって今日のハロウィーンになったらしい。
クリスマスすら祝わないわが家にはまるで無縁な行事だが、南瓜は大の好物だ。そうだ、あとで南瓜のプディングでも買ってこよう。
差し迫った原稿執筆はないので、久しぶりに心穏やかな週末。前々から依頼されているロシア絵本に関する調べものに取り掛かることにする。あれこれ具体的な図像についての問い合わせなので、いくつもの絵本の現物にあたってみなければならない。けっこう時間がかかりそう。