夕刻、家人に誘われて自転車で隣町まで出向き、詩人アーサー・ビナードの講演会を聴く。
19:00- 千葉市、美浜文化ホール
朗読と講演の夕べ
1)
「ここが家だ──ベン・シャーンの第五福竜丸」
作/アーサー・ビナード
朗読/森山玲子
2)
「ラムネの飲み方~21世紀の日本とアメリカの関係をみつめて~」
講演/アーサー・ビナード
憲法第九条を守る市民運動「美浜区平和と文化のつどい連絡会」が主催するイヴェント。初めて参加する。
アーサー・ビナードの名は、今日の第一部でも朗読されたベン・シャーンと「共作」した詩画集『ここが家だ』を通して二年ほど前に知った。
リトアニア生まれながらアメリカ民衆文化に根ざした画家として、一貫して弱者と視線を共有しようとしたベン・シャーン。冤罪の可能性が高い「サッコ=ヴァンゼッティ事件」を告発した作品で知られるが、彼は南太平洋で米国の水爆実験が引き起こした「第五福竜丸被爆」を題材にした作品群も残している。「ラッキー・ドラゴン」シリーズがそれだ。赤狩りの時代にあって、ひとりのアメリカ人が自国の犯罪を作品化するのにどれほどの勇気を要したか。彼は筋金入りの反権力の芸術家だったのだ。そこに時代を超えた意義を見出したアメリカ詩人ビナードの慧眼もさすがだと思う。
第二部の講演は、フランス語の成句「階段の機知 L'esprit de l'escalier」(あとになって妙案を思いつくこと)やら、値上げ後の価格に "new" をつけて取り繕うアメリカの習慣やら、古代中国の韓非子の故事「守株待兎」やら、「ラムネ」と「レモネード」の違いやら、身近で面白い話題をつぎつぎに繰り出し、現今のグローバリズムに痛罵を食らわす。ゆっくり淡々とした日本語ながら軽妙洒脱、当意即妙に展開させる話術にほとほと感心させられた。
最後は「憲法第九条」に関して、「古びて現実に合わなくなったのでなく、むしろ新しすぎるくらいだ」と締めくくった。
帰宅したら九時半。熱い珈琲と、帰途コンビニで買ったパンでささやかな夕食。