東京へ出たついでにお茶の水に立ち寄る。いつもの店でいつものように過ごそうと思ったのだが、ふと気が変わって、久しぶりに丸善へ足を向けてみた。新刊書をちょいと覗いてみたくなったのだ。すると…
あるわあるわ、すぐにでも頁を繰って読み始めたくなる好著、刺激的な大著がここにも、あそこにも。Here, there, and everywhere. という奴だ。困った。
とりあえず、この四冊を抱えて帰ることにする。秋の夜長が愉しみである。
加藤哲郎
ワイマール期ベルリンの日本人
洋行知識人の反帝ネットワーク
岩波書店
2008
──ナチス台頭前夜、ベルリンで読書会を始めた若き知識人群像。その軌跡と時代の波濤との接点を歴史として描き出す記念碑的労作。
津野海太郎
おかしな時代
『ワンダーランド』と黒テントの日々
本の雑誌社
2008
──アングラ劇団旗あげのかたわら、『新日本文学』で編集を学び、晶文社で雑誌みたいな本を次々刊行。黒テントをかついで日本縦断のはて、幻の雑誌『ワンダーランド』を創刊! 60年安保から東京オリンピック、そして70年代前後の大学紛争まで、若者の文化が台頭した「おかしな時代」を回想するサブカルチャー創世記。
前川公美夫
頗る非常!
怪人活弁士・駒田好洋の巡業奇聞
新潮社
2008
──「天上天下唯我独尊、頗る非常大博士!」頗るケッタイな口上で日本全国を席巻した活動写真弁士の 頗る面白い、日本映画史の空隙を埋める巡業記! 頗るおおらかな明治ニッポンがいま甦る!
アリエット・アルメル著
北原ルミ訳
ビルキス、あるいはシバの女王への旅
白水社
2008
──ピエロ・デッラ・フランチェスカの畢生の大作 〈聖十字架伝説〉 はいかにして生まれたのか? イタリア・ルネサンスと旧約聖書──ふたつの世界で育まれ、やがて絡み合う、激しい愛と創造の物語。
これからというもの、しばらく眠れぬ夜々と寝不足の日々が続きそうだ。やれやれ。