今日は先週に引き続き第二回目の授業。
まず準備にえらく手間取った。開講一時間前に教室に着いて機材のセッティングを始めようとしたのだが、非常勤講師に備品のPCを貸し出すのはままならぬという。規則でそうなっているのだそうな。それでは話が違うではないか、先週は貸し出してくれたぢゃないか、そう抗弁したところで先方は聞く耳をもたない。そもそもPCがないと画像が映せない。万事休す。なんとか捩じ込んで予備の機材を借り出して事なきを得たが、全くこの大学(あえて名は伏せるが、千葉県内の国立大学)はどうなっているのだろう。教室に卓袱台があったら引っくり返したいところだ。
今日の授業はCDで音楽を流しながら、正確なタイミングでPCの画像を次々に投影することになっていたので、事前にリハーサルをやりたかったが、定時になっても機材が届かない体たらく。致し方ない。ぶっつけ本番で始めるほかなかった。
「日本人のバレエ・リュス体験」についてたっぷり話したかったのだが、そもそも前提になるバレエ・リュス(ディアギレフのロシア・バレエ団)について知らない学生が大半だと察しられるので、まずは概略の歴史をざっとおさらい。バクストやベヌアの舞台装置やニジンスキーの写真をいろいろ映しながら説明にこれ努める。ここまででざっと一時間を費やす。
そのあと、ニジンスキーの代表的な演目として『牧神の午後』を採り上げ、粗筋を紹介したあと、いよいよ本題に突入。ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」を流しながら、初演時に撮られた記録写真を然るべき順番で投影していく。
ド・メイエルが撮影した一連のスタジオ・フォト、リハーサル時に撮られた写真、1916年のアメリカ興行時のスナップなど、ニジンスキーの『牧神の午後』はかなりの数のスチルが現存している。しかもニジンスキー自身が振付を詳細に記録した「舞踊譜」が解読されているので、それらの写真がどの場面を写したものかが正確に同定されている。昨日あらかじめアン・ハッチンソン・ゲスト Ann Hutchinson Guest の "Nijinsky's Faune Restored" という書物と首っ引きで二十数枚の画像をディスクに取り込み、順番にナンバーを付し、楽譜の所定の場所に相番号を振った。それに沿って、正しいタイミングで画像を切り替えていく。ひとつひとつは静止画像だけれど、こうして流れのなかで鑑賞すると、ニジンスキーが「動き出す」。
実はこのアイディアは小生のオリジナルではない。昔、「ダンス・オン・フィルム」という上映会で、このように構成された短篇映画を観てえらく感動したことがある。だから今日の授業でその顰に倣ってみたのであるが、うまくいったかどうか。
あわせて、1912年の『牧神の午後』パリ初演の舞台を実見した石井柏亭の鑑賞記録を紹介分析した拙文をテキストとして配布した。かなりの長文だが、果たして学生たちに読んでもらえるかどうか。
成否はともかく今日の授業は終わった。汗だくになったが、話すべきことは話したのだから、これで良しとしよう。
そのあと東京へ出て演奏会を聴いたのだが、その話は明日にしよう。