もうこの歳だから誰もわが誕生日のことなぞ気にもとめまい、と端から諦めていたのだが、嬉しいことに四人の方から相次いでお祝いの言葉を贈られた。感激である。
一人目は実の妹。夕食後に電話をくれた。今月末、一緒に芝居を観にいくことになっている。もっとも10月5日は実父の命日にもあたっているため、「おめでとう」と軽々に口にしづらい間柄なのであるが。
二人目はずっと年下の友人。日付が変わるや否や、瀟洒な「バースデイ・カード」を電送して下さった。インターネットのプロヴァイダーにそうしたサーヴィスがあるのだそうだ。さすがに若い人はよく知っているものだと感心。
三人目は昨日のエントリーにコメントしてくれた Boulez さん。先年、札幌に旅したときお目にかかったきりご無沙汰だ。上京された折りにでもぜひ再会したいものだ。一緒に中古レコード屋巡りなどいかが?
四人目は三十数年来の旧友。懇切なメールをくれた。もう何年も逢う機会に恵まれないのだが、よくぞ誕生日を憶えていてくれたものだ。こちらは先方の誕生日なぞ、とうに忘れてしまっているのだが。
その四人目の友人からのメールに、「
『ミスリム』が出たのはもう三十四年前なのですね。思えば遠くへ来たもんだ…」とあった。そうだったのだ、すっかり失念していた!
荒井由実のセカンド・アルバム『ミスリム Misslim』が発売されたのは1974年10月5日、小生の二十二歳の誕生日当日なのであった。
その日の午後、銀座の山野楽器の上階にある小さなホールで、ささやかな発売記念コンサートが催され、ユーミンはまだ乏しかった持ち歌を披露したのだった。もう委細は思い出せないけれど、ニュー・アルバム収載曲では「12月の雨」を唄ったのではなかったか。
まだ駆け出し同然だった彼女には熱心なファンは東京にもごく少数しかおらず、終演後ちょうど刊行されたばかりの『ひこうき雲』楽譜集を小生が差し出すと、ユーミンは「私も初めて見るわ」と驚いてみせたあと、何を思ったか「あなたの似顔絵を描いてあげる」と言うなり、その楽譜集の余白にマジックペンで一筆書き風にスラスラと描いた。それは二十二歳の小生の顔に確かによく似ていた。古き良き時代の思い出である。