所用で東京へ出た帰途に六本木まで足を伸ばし、森美術館で開催中の「アネット・メサジェ 聖と俗の使者たち」展を鑑賞。
副題の「聖と俗の使者たち」がちょっとわかりにくいが、察するに「使者」はフランス語で messager なので、これはまあ地口というか一種の掛詞であり、メッセージをもたらす作品群といった意味合いだろうか。
これまで名のみ高く、わが国では肝腎の作品紹介が満足になされなかったメサジェだが、本展はその長きに亙る欠落を補って余りある充実ぶり。鳥の剥製を象った1970年代初頭のささやかな手作りオブジェに始まり、2005年ヴェネツィア・ビエンナーレで発表された大作インスタレーション『カジノ』、さらには最新作までが一堂に会するのを目の当たりにすれば、彼女の歩みは見事なまでに一貫している。
ぬいぐるみや布、毛糸など身近な品々と、手・足・目・鼻・耳などの写真を思いがけない仕方で取り合わせた作品は、遊び心たっぷりで、ときにグロテスク。同工異曲のようでいて、時代とともに表現の深化を如実に示す。近年のインスタレーションでは、屈託ない無邪気さを失わずに、大空間をやすやすと操作し、生と死が織りなすドラマを鮮やかに現出させる。そこに籠められた「メッセージ」は多義的で押しつけがましくなく、いかようにも読み解きうるが、観る者の目と心を魅する力は紛れもない。
同じチケットで屋上と展望台にも立ち入れるというので、三百六十度の夜景パノラマをたっぷり堪能。ここからの眺めの凄さには言葉を失うほかない。