癌で闘病中と伝えられていたポール・ニューマンが26日に死去した。享年八十三。
功成り名遂げた名優の死なので拙ブログが悼むまでもないのだが、それでも「懐かしい人に死なれた」という感慨がこみ上げる。
小生の世代は『ハスラー』(1961)をリアルタイムで観ていないので、ニューマンといえばやはり『明日に向かって撃て!』(1969)のブッチ・キャシディ役、そして『スティング』(1973)のヘンリー・ゴンドーフ役を余裕たっぷりに演じた姿が真っ先に浮かぶ。渋く格好よく、味わい深い演技が忘れがたい。どちらもロバート・レッドフォードとの共演、監督はともにジョージ・ロイ・ヒルだった。
その後はシドニー・ルメット監督作品『評決』(1982)が世評に高いが、小生にはどうもしっくり来ない作品だった。むしろ、ロバート・アルトマン監督の(世評のきわめて低い)『ビッグ・アメリカン Buffalo Bill and the Indians』(1976)で、バッファロー・ビルを演じた姿が印象的。なんというか、「西部劇のヒーローだと思って出演したら、しょうもない駄目男の話だったので、なすすべもなくただ困惑」という表情が滲み出ていて滅法面白かった。また見直す機会があったらなあ。当初この作品はジョージ・ロイ・ヒル監督が演出するはずだったのだが降板し、アルトマンに代わった経緯があるので、ニューマンとしては「話が違うゾ」というのが本音だったのだろう。
これでニューマンはもうアルトマン監督作品はこりごり、かと思いきや、もう一本『クインテット』(1979)でも付き合っているので、両者は案外と肝胆相照らす仲だったのかもしれない。
そうそう、昔観たポール・ニューマン主演作品では、『マッキントッシュの男』(1972)がなかなか良かったように思う。デズモンド・バグリー原作によるスパイ・サスペンスもので、ジョン・ヒューストン監督作品。相手役のドミニク・サンダが素晴らしく美しかった。これも再見できるといいな。
高名な割に作品に恵まれなかった感のあるニューマンだが、こうして記憶を手繰ると、やはり歴史に残るべき名優だという思いが深まる。回顧上映が望まれる。