昨日に引き続き、秋の始まりのような清々しさ。日向を歩くのが苦にならない。
先日ネットで古書を注文したところ、どうやら店舗が飯田橋にあるらしいので、所用で上京したついでに取りに出向く。
高速下の目白通りを江戸川橋方向に五分ほど歩いて、ちょっと脇道に入ったあたりに、ひっそりとその店はあった。この界隈はトッパンホールや印刷博物館への往還でしょっちゅう歩いているのに、こんなところに古書店があることに迂闊にも今まで気づかなかった。
「アートブック アルテリア」という美術古書の専門店。扉を開けて店内に足を踏み入れた途端、あ、と声が出そうになる。
ほどよい広さの店内が和洋の美術書の書棚で埋め尽くされる。ジャンルは文字どおり古今東西。しかも品揃えが抜群に良さそう。たまたま目に入ったイタリア・ルネサンスの棚だけでも、シモーネ・マルティーニ、ピサネッロ、マザッチョ、ドナテッロ、ドメニコ・ヴェネツィアーノ、ピエロ・デッラ・フランチェスカ、マンテーニャ…と、美味しいところがズラリ。これは魂消た! 目の眩むような壮観なのである!
こんなによく美術書の揃った古書店は日本では初めてだ、しかも本と本の配列が実に適切なのが心憎い。店主の高橋祐策さんにそう正直に申し上げたら、満更でもない、という表情をなさった。なんでも開店から早六年になり、当初から美術書のみの古本屋を目指し、妥協を排してここまで漕ぎつけたのだという。凄いことだ。
立ち話しているうちに七時の閉店時刻を疾うに過ぎてしまった。
近々の再訪を約して、注文しておいた一冊のみを小脇に抱えて退出。忘れずにその書名だけでも記しておこう。
Erast Kouznetsov (ed.):
Niko Pirosmani
Paris: Edition Cercle d'art, 1983.