夕方、ようやく所用から解放され、その足で新宿のジュンク堂へ赴く。明日までにどうしても要り用な本があったのだが、詩のコーナーにも海外文学のコーナーにも見当たらない。
店内の端末で検索すると、ここではなく池袋店に一冊だけ在庫があるという。取り寄せてもらうのでは間に合わないので、こちらから池袋へ出向くことにする。
開通間もない地下鉄「副都心線」で池袋へ。これが失敗だった。西口寄りに出てしまい、反対側にあるジュンク堂までかなりの距離を延々よ歩かされる羽目に。ふう。ここの三階でお目当ての一冊はすぐ見つかった。折角なので、ついでに海外文学と棚をあちこち物色し、以前から探していたチャペックの翻訳書を手に入れた。
カレル・チャペック 著
田才益夫 訳
マクロプロス事件
八月舎
1998
いまではヤナーチェクのオペラ化作品(そのレヴューは
→ここ)でもっぱら知られるチャペックのこの戯曲であるが、昭和初年の日本ではすでに二種類の翻訳が存在し、『RUR(ロボット)』や『虫の生活』と並んで広く読まれたと推察される。本書は原典のチェコ語からの初めての翻訳であり、十年前に刊行されていたのだが、なぜかこれまでどの書店の棚でも見かけた試しがなかった。ようやく手に取れて幸いだ。
結局十時の閉店近くまでジュンク堂に居残って、そのあと地下鉄とJRを乗り継いで帰宅したら、もう十一時半を回っていた。さすがに草臥れた。
ひと風呂浴びたあと、新宿で拾い上げたCDを少しだけ聴く。
アレクサンドル・タンスマン:
ヴァイオリン・ソナタ 第二番 (ブロスワフ・フーベルマンに)
ヴァイオリンとピアノのための五つの小品 (ヨセフ・シゲティへ)
ヴァイオリンとピアノのための幻想曲 (ディアーヌ&アンドレ・ジェルトレルへ)
ヴァイオリン/バルバラ・トロヤノフスカ
ピアノ/エリズビェータ・ティシェツカ
1999年10月、2004年1月、2000年9月
Acte Prealable APO 132 (1999)
ニコライ・ロスラヴェツ:
室内交響曲 (1934~35)
新月の時間に (c.1910-13)
イラン・ヴォルコフ指揮 BBCスコティッシュ交響楽団
2005年12月、2004年6月、グラズゴー&ダンビー
Hyperion CDA 67484 (2006)
前者はポーランド出身で両大戦間のパリを拠点に活躍したタンスマンを顕彰するシリーズの一枚らしく、ほかにギター曲を集めたディスクも見つけた。作品は甘美な旋律に彩られ聴きやすいが、甘美すぎるかも。演奏の質はかなり落ち、音程もおぼつかない。
後者はロシア・アヴァンギャルド音楽の旗手にして、困難な生涯を余儀なくされたロスラヴェツの作品集。室内交響曲が聴きものだ。シェーンベルクばりの、しかし独自の音組織による精緻な音楽だが、最悪の時代に遭遇し、理不尽にも全く顧みられなかった。ようやく2005年に楽譜が刊行され、本ディスクが世界初録音なのだという。
一週間の疲れが溜まっている。季節の変わり目だからか。グルジア・ワイン「ピロスマニ」を寝酒代わりに飲んで寝てしまおう。