雨上がりの朝。五時に目覚める。結局この旅では目覚時計は不要だった。
荷造りは昨晩のうちに終えたので、もう心配はない。
六時のBBCニュースで映画監督シドニー・ポラックの訃報に接する。
享年七十三。LAで家族に看取られての死だという。
彼の作品に生きる糧を与えられた青春の一時期を思い返す。
八時過ぎ、これが本当に最後のイングリッシュ・ブレックファスト。
九時、チェックアウト。二度とこのホテルの敷居を踏むことはあるまい。
九時十五分、路線バスに乗り込む。
途中、車窓からオールド・ヴィック座、サウスバンクの国立劇場、RFH、
コヴェントガーデン界隈を見納め、心のなかで挨拶を送る。いざさらば、愛しき倫敦。
十時十五分、ラッセル・スクエア着。
地下鉄ピカデリー・ラインで一路ヒースロー空港ターミナル5へ。
ここはブリティッシュ・エアウェイズの専用ターミナル。発券は嘘のように簡単。
構内のイタリアン・カフェでゆっくりと昼食。結構なお味。これが倫敦最後の食事。
手荷物検査とボディチェックは厳重を極める。まあ致し方あるまい。
今度の旅は辛かった。愉しかった。あちこち見聞した。友人の有難味を噛み締めた。
もう当分この街に帰ってくることはないだろう。