ohtinsky こと太田丈太郎さんは気鋭のロシア文化研究者である。普段は熊本学園大で教鞭をとっておられるが、上京された際に何度かお目にかかったことがある。小生のように門外漢として露西亜を遠く眺めているのとは違い、モスクワやサンクト・ペテルブルグに滞在し、その懐に分け入って深く研究されている実力派である。
太田さんでいつも感嘆してしまうのは、アンドレイ・ベールイ研究というご専門(奇しくも若き畏友・鴻野わか菜さんとおんなじだ)をもちながらも、軽快なフットワークと旺盛な好奇心を発揮して、日本ゆかりの作曲家アレクサンドル・チェレプニンの足跡や、山田耕筰の二度にわたるソ連楽旅、さらには1928年の市川左団次一座の歌舞伎訪ソなど、未だ解明されざる、それだけに魅力的なテーマと果敢に取り組んでおられる。小生なぞは太田さんにお目にかかるたび、ただもう圧倒されてしまい、おのれの無知蒙昧を恥じ入るばかりなのである。
当ブログでもすでに何度か彼のことを(無断で)紹介させていただいた。
→ここ、
→ここ、
→ここ あるいは
→ここ
そのオーチンスキー、もとい太田丈太郎さんがこのたび ohtinsky's blog と題して
「たのしや! おろしや見聞記」を開設された。まだ始まって一週間にもならないというのに、もうオーチンスキー節が随所で炸裂して、読んでいるそばから元気なお声が聞こえてきそうなほど。
恐ろしく関心領域の広い太田さんらしく、話題はロシアのビール、プラモデル、ダーチャ暮らし、mixi事情...と実に多岐にわたっている。教え子の学生さんを読者に想定しているためだろうか、文体も軽やかに弾んでいて若々しい。
それに引き換え、わがブログを顧みると、どうもこのところ老人の繰り言めいて、愚痴や思い出話ばかりでなんとも情けない限りである。思うに、おそらく小生にとってロシアとは「今、そこにある」アクチュアルな存在なのではなく、夢か幻のように垣間見える儚いイリュージョンに過ぎないのではないか。