昨年の八月、苦労してチケットを手に入れて、はるばる三軒茶屋まで観に行った井上ひさしの新作『ロマンス』だったが、情けないことにその観劇体験もいつしか記憶の彼方へと遠のいてしまった。
こういうとき、ブログはつくづく有り難いと思う。自分で書いたものとはいえ、忘れっぽくなった記憶を蘇らせてくれる重宝な媒体だからだ。
「ただ憧れを知る者のみが」
→ここ
「ただ憧れを知る者のみが(続き)」
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「ただ憧れを知る者のみが(結び)」
→ここ
読み返してみて、「ふうん、そうだったか」と、ちょっと他人事のように感じる。半年以上経って、思い出せるのはクニッペル役の大竹しのぶの憎たらしいほどの巧さと、妹役の松たか子の悲しいほどの木偶の棒ぶりくらい。
このとき劇中で用いられたいくつかの歌の出典が判明せず、だいぶ経ってから『すばる』誌上で活字化された台本を手に入れたが、結局わからなかったときの記事も読み返した。
「活字になった『ロマンス』」
→ここ
今日、梅田英喜さんと会う用事があって神保町へ出向いた帰途、この『ロマンス』の台本が書籍化され平積みになっているのを見つけ、思わず手に取ってしまう。上述の『すばる』昨十月号で読んでしまったのだが、今度のこの本には巻末に芝居の挿入曲がすべて明記されていた。ただもう嬉しくて、それだけの理由でつい購入してしまった。
井上ひさし
ロマンス
集英社、2008
第一場/「チェーホフの噂」=ガーシュウィン「ドゥ・ドゥ・ドゥ」
第三場/「ロマンス」=チャイコフスキー「ただ憧れを知る者のみが」
第六場/「サハリン」=リチャード・ロジャーズ「小さなホテル」〜『オン・ユア・トウズ』
第八場/「なぜか……」=チャイコフスキー「なぜ」
第九場/「タバコのワルツ」=宇野誠一郎「四季の鳥」〜『ひょっこりひょうたん島』
第十場/「どうしたのかしら」=リチャード・ロジャーズ "Sing for your Supper"
第十五場/「ボードビルな哀悼歌」=チャイコフスキー「友よ、信じるな」
こういうことだった。う〜む、ロジャーズ&ハートとは気づかなかったなぁ。