今日、というか、もう日付が変わったので昨日なのだが、かねてから花見をすべく旧友たちと落ち合う約束を交わしていた。ぎりぎりまで集合場所と時間が決まらず、ヤキモキしたのだが、Boe君の発案で午後三時、新宿のアルタ前に集まるよう連絡があった。
明日が締切の連載があるので、気が気でなかったが、早起きして冒頭の十数行を一気に書き上げたので少しだけ安心する。残りは帰宅後に仕上げることにして、午前中に傘を持って家を出る。
今にも降り出しそうな空模様だが、まずは中央線で阿佐ヶ谷に向かう。ここから二十分ほど歩いたところに、小生が密かに「東京で最も美しい桜の名所」と思い定めた場所(お寺の境内)がある。二十年ほど前、自転車で周遊していて偶然に発見したスポットなのだが、爾来この季節には欠かさず訪れることにしている。今年は無理かもしれないと諦めかけていたのだが、友人から「満開の桜がひときわ素晴らしいですよ」とメールで教えられ、頑張って出向くことにした。
訪れてみて、ああ、ここの桜はやっぱり格別だ、と痛感する。ささやかな寺域に二十本に満たない染井吉野が植えられている。ただそれだけなのだが、しみじみ「桜はいいなあ」と思う。極楽浄土とはこのことか。うっとり見入りながら半時間ほど過ごすが、たまさかの通行人のほか、ほとんど誰とも出遭わない。静寂のなか、心に沁み入る観桜。今年もここに来られて良かった。
帰りはバスで荻窪に出て、ここから新宿へ移動。三時かっきりに集合場所へ。すでにポツポツ降り始めていて、果たしてこれで花見ができるのか危ぶまれる。そのまま居酒屋に直行、という案も出たのだが、友人たちと協議の結果、新宿御苑は取り止めて、至近距離にある花園神社へと向かう。その間にも雨は少しずつ本降りの様相を呈してくる。
三時二十分頃、花園神社に到着。ここの境内も実にささやかな広さだが、いい按配に桜が配されていて、しかも赤毛氈を掛けた椅子席まで用意されていて、ここで抹茶と茶菓をいただく。あいにく雨が強く降り出したので、早々と退散。半時間も居られただろうか。
そのあとは豆腐料理を供する居酒屋に駆け込んで、一室を占領して歓談と飲食。三十年来の友人たち十人が集い、腹蔵なく談笑する幸せをつくづく噛み締める。
心にずっと屈託を抱える小生だったが、皆の顔を眺めていたら、なんだか胸のつかえがスッと下りた気がして、久しぶりに料理が美味しいと感じた。これで長いトンネルから抜け出たと思う。
なおも「呑み足りない」と、ゴールデン街へ赴く数名を見送りながら、十時半過ぎに散会。友は宝であると痛感した一夜であった。