所用で新宿へ出たついでに吉祥寺まで足を伸ばしてディスクユニオンでCD渉猟。プロコフィエフを中心に幾枚かを手にする。帰宅後、風呂上がりに少しずつ聴いてみると、どれもたいそう良い。
"Prokofiev: Complete Works for Cello and Piano"
プロコフィエフ:
チェロ・ソナタ 作品119 (1949)
バラード 作品15 (1912)
アダージョ ~「シンデレラ」作品97 bis (1944)
アンダンテ ~チェロ小協奏曲 作品132 (未完) (1952)
五つの断章 (ロマン・サポジニコフ編) ~「道化師」作品21 (1915)
無伴奏チェロ・ソナタ 作品134 (未完・一楽章、ヴラジーミル・ブローク編) (1952)
チェロ/アレクサンドル・イワーシキン
ピアノ/タチヤーナ・ラザレワ
2002年8月28日~9月1日、モスクワ音楽院小ホール
Chandos CHAN 10045 (2003)
これは飛びきりの名演奏だ。チェロ・ソナタの冒頭の低音が響くや否や、永年馴染んだロストロポーヴィチの演奏(実演も聴いた)の呪縛から解き放たれる思いがした。過剰な謳い上げを抑制しつつ音楽を深く彫琢するアプローチが見事なのだ。
二十歳そこそこの若書き(バラード)から、命が尽きる間際まで書き進めた未完の作まで、プロコフィエフのチェロ独奏曲を集大成することでプロコフィエフの生涯を通観させる構成が心憎い。最後の無伴奏ソナタの消え入りそうな諦観が心に染みる。
"Prokofiev: Piano Music Vol. 2"
プロコフィエフ:
束の間の幻影 作品22
諷刺(サルカズム) 作品17
老いた祖母の物語 作品31
ピアノ・ソナタ 第七番 作品83
ピアノ/ボリス・ベルマン
1989年12月10-12日、1990年2月2-3日、ザ・モールティングズ、スネイプ
Chandos CHAN 8881 (1990)
この間も聴いたボリス・ベルマンによる全集の別の一枚を見つけた。「束の間の幻影」がことのほか良く、各曲の性格の引き分けが巧みなのに舌を巻く。未知の小宇宙を訪ね歩くような眩惑的な体験だ。次の「サルカズム」も同じ。第七ソナタは他にあまた名演が犇く曲だが、この演奏もなかなかのもの。徒に激昂することなく、プロコフィエフの書法に寄り添いながら、緻密に弾き込んでいく姿勢が潔い。
ちょっと疲れてきたので、まるで毛色の違う音楽を聴こう。
フランク: ヴィオラ・ソナタ イ長調
ヴュータン: カプリッチョ(無伴奏)、エレジー、ヴィオラ・ソナタ 変ロ長調
ヴィオラ/今井信子
ピアノ/ロジャー・ヴィニョールズ
1992年1月9-10日、ケンブリッジ大学音楽学部音楽堂
Chandos CHAN 8873
予想にたがわぬ伸びやかなフランク。思わず引き込まれてしまう。ヴィオラで奏するハンディなど露ほども感じさせず、むしろ深々とした音色はヴァイオリン以上に作曲家の精神の飛翔を際立たせる。ヴィニョールズのピアノの巧さにも感心。続くヴュータンのヴィオラ曲はどれも初見参だが、ほどよく甘やかでしかも品格を漂わせた佳曲ばかりだ。
"Musique francais pour flute et piano"
プーランク: フルート・ソナタ
ルーセル: アンダンテとスケルツォ
イベール: 遊戯 (ソナティネ)
ラヴェル: ハバネラ形式の小品
ルーセル: 笛吹きたち
ドビュッシー: シュリンクス
ミヨー: ソナティネ
フルート/クルト・レーデル
ピアノ/ノエル・リー
1982年11月、パリ、サル・アディヤール
Arion ARN 68238 (1993)
お懐かしやクルト・レーデル。小生の世代はずいぶん彼とその手兵の合奏団のバロック演奏に親しんだものだ。その彼がフランス近代音楽を取り上げ、フルートを吹く。音色はいかにもドイツだし、宙を駈けめぐるような溌剌にも、光彩陸離たる技巧にも乏しい。それでも、なんとか聴かせてしまうのはレーデルの音楽性の故であろう。
今夜の締め括りはぐっと軽やかに。
"Joanna MacGregor on Broadway"
ガーシュウィン:
「ソングブック」~ザ・マン・アイ・ラヴ、ス・ワンダフル、マイ・ワン・アンド・オンリー、クラップ・ヨ・ハンズ、ドゥ・イット・アゲイン、サムバディ・ラヴズ・ミー、スウィート・ロウ・ダウン、ファッシネイティング・リズム、ストライク・アップ・ザ・バンド、フー・ケアズ?、オウ・レイディ・ビー・グッド、アイル・ビルド・ア・ステアウェイ・トゥ・パラダイス、ドゥー・ドゥー・ドゥー、ザット・サートン・フィーリング、ライザ、アイ・ガット・リズム
ハリー・ウォーレン: 42番街、それってただの紙の月
コール・ポーター: 私のハートはダディのもの
ジェローム・カーン: あいつを愛さずにはいられない
コール・ポーター: 夜も昼も
リチャード・ロジャーズ: ジューン・イズ・バスティン・アウト・オール・オーヴァー
コール・ポーター: 愛は売り物
サミー・ファイン: またお会いしましょう
ピアノ/ジョアンナ・マクグリガー
1990年6月、ロンドン、アビー・ロード・スタジオ
Collins 11372 (1991)
さすがに疲れてしまった。今夜は翻訳は勘弁してもらってもう眠るとしよう。