昨日に引き続き、土方久功(ひさかつ)について少し書く。
実は今日まるで別の話題を用意していたのだが、いつも読んでいて下さる maru さんから「土方久功さんの名前を、僕は、まだ子供たちが小さい頃に読み聞かせた絵本で知りました。」というコメントをいただき、そうだ、そうだった、土方といえばユニークな絵本作家としての貌にも触れておかねば、と気づき、それについてちょっと書いておこうと思い立った次第。
土方は福音館の月刊「こどものとも」のために忘れがたい数冊の絵本を残している。
『おおきなかぬー』 1963年1月号
『ゆかいなさんぽ』 1965年11月号
小生がすぐ思いつくのはこの二冊。前者は土方の手がけた最初の絵本で、カラフルな色調で共感をこめてポリネシア民話を描いたもの。後者はといえば、
子ブタが、ぶたぶたと歩いていると、アヒルがやってきて、いっしょに山の方へ行くことになりました。それからトラも、ウサギも、いっしょになって「ぶたぶた がおがお うぉお ぴょんぴょん」と歩いていくと、山の方からは鳥たちも「つぴつぴ ちゅんちゅん じぇえ」と歌いながらやってきて、みんなで歌の競争をはじめたから、もうたいへん! 文字通りの愉快な絵本。
とまあ、ナンセンスでおかしな内容。懐かしいなあ、小生はこれで土方の絵とはじめて出遭った。妹が月ぎめで幼稚園から持ち帰った絵本の一冊がこれだったのである。どの動物も愛嬌があって、しかも野趣たっぷりで、実にいい味を醸している。
このほか、1970年代に入ってから(だと思うのだが)『ぶたぶたくんのおかいもの』と『おによりつよいおれまーい』の二冊が出ている。これらもたしか架蔵しているはずなのだが、すぐには出てこない。maru さんが記憶されているのは、この『ぶたぶたくんのおかいもの』に違いない。表紙に愛すべき豚の絵が大きくあしらわれている絵本である。
彼は三十代を過ごしたパラオで島民と親しく交わり、民俗学者の視線でその習俗をつぶさに観察した。いやむしろ、彼自身が「魅せられた人」となって、南の島のおおらかな暮らしに同化していたとおぼしい。彼が乞われて絵本を手がけたのは、その数十年ものちのことだが、どの一冊をとっても、ちょっと日本人離れした無垢のユーモアと優しみがあって、形容しがたい不思議な魅力に充ちていた。
土方久功と絵本については、敬子夫人が貴重な想い出を書き残しているので、ぜひお読みいただきたい(
→ここ)。
世田谷美術館の展覧会をこの週末に観に行こうと思う。そのうえで、彼の仕事についてもう少し考えを深めてみたい。