昨日に聴いた一連のプレートルはやはり記憶にたがわず良いものだった。
最初にかけた「牝鹿+世界創造+狼」の一枚は、忘れもしない、かつて御大にサインしてもらったLPと全く同一だから、懐かしさもひとしおだし、何十年経っても永遠の青春を謳歌し続ける稀有な演奏だと思う。蓋し名盤である。
次のドビュッシー+カプレ+シュミットはまずもってフランス作曲家のE・A・ポーもの三曲という企画が素晴らしい。演奏がこれまた絶妙なのだ。ドビュッシーの未完の歌劇「アッシャー家の崩壊」というのが聴きもの。
最後の二枚組は標題のとおり、四年前に彼の八十歳を記念して仏EMIがリリースしたアニヴァーサリー・アルバムだが、選曲に難があり、ポピュラー名曲のサワリ集みたいなのは遺憾である。とはいえ、グノーの「ファウスト」のバレエ音楽やラヴェルの「ラ・ヴァルス」など好演に事欠かず、しみじみ傾聴してしまう。
「彼に向かって『フランスのコンダクター』と呼びかけるのは禁句である」という一文で始まるジャン=クロード・オフェレのプレートル讃のライナーノーツがなかなか秀逸。その標題がふるっていて、"Eighty years old" ならぬ "Eighty years young" というのだ。今なお矍鑠と指揮台に立つ彼にこそ似つかわしい言葉であろう。