そういうわけで約束の時刻に高円寺駅改札へ。
今年はぎりぎりまで集合場所も人数も定まらず、実現すら危ぶまれた恒例の蕎麦ツアーだが、蓋を開けてみれば七人が集まった。それぞれ年末の忙しいさなかに時間をやりくりして馳せ参じたわけだ。午前中に仕事を片づけてきた者もいれば、このあと夜に仕事が控えているという者もおり、まさに万障繰り合わせて、という趣なのである。なかには五年ぶりに顔を合わせる仲間もいて、こうして旧交を暖められる悦びは何物にも代えがたい。
訪れたのは(九月にも行った)高架下の「いっぷく」という店。ここで天麩羅やカツをツマミに呑み、蕎麦を食する。結局ここに閉店まで五時間も居続ける。そのあとは「国道58号線」という沖縄料理屋でさらに呑みかつ食う。途中で正体なく寝込む者もでてきたので十時過ぎに解散。
まあ例に拠って例の如く、他愛のない雑談に花を咲かせたわけだが、それでも話題はアルトマンや田中登の映画から現今の教育問題へ、さらにはクレズマー音楽、琉球音楽へと、とめどもなく転がってゆき、七時間が過ぎるのがあっと言う間だった。
千葉まで二時間かけて戻るがまだほろ酔い気分が残っていて、寒さが全然気にならない。仲間たちに会えた嬉しさを反芻しながらとぼとぼ家路を辿っていたら、東の空にぽっかりと下弦の月が昇ってくるのが見えた。
深夜過ぎに帰宅し、風呂から上がっても少しも眠くならない。そこで昨日ちょっと吉祥寺のディスクユニオンに立ち寄って見つけたCDを少しだけ聴く。
ショスタコーヴィチ: バレエ音楽「黄金時代」
ホセ・セレブリエール指揮 ロイヤル・スコティッシュ国立管弦楽団
2006年5月、グラズゴー、ヘンリー・ウッド・ホール
Naxos 8.570217/18 (2006)
*ロジェストヴェンスキーに続くふたつ目の全曲盤(繰り返しも省略しない初の完全全曲演奏)。とりあえず二幕(と間奏曲「タヒチ・トロット」)を聴いただけだが、セレブリエールの柔軟な音楽づくりに驚嘆。驚くべき名演ではなかろうか。
ショスタコーヴィチ: チェロ協奏曲 第一番、第二番
チェロ/ナターリヤ・グートマン
ユーリー・テミルカーノフ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
1988年11月、ウォットフォード、タウン・ホール
RCA 7918-2-RC (1990)
*あまり見かけない盤なので手に取ったのだが、スケールの小さい演奏でがっかり。伴奏指揮者の非才は承知しているが、それにつられて独奏者までちぢこまってしまったのか。
シリル・スコット: ピアノ協奏曲 第一番、第二番、ピアノと管弦楽のための詩曲「ある朝早く」
ピアノ/ジョン・オグドン
バーナード・ハーマン指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
1975年頃
Lyrita SRCD 251 (2007)
*大田黒元雄の大いに称揚したシリル・スコットは長らく等閑視され、最近ようやく再評価されつつある。本盤はその前触れとなった先駆的な演奏であり、しかも水準がすこぶる高い(指揮者に注目!)。「ある朝早く」の美しさにちょっとほろりとなる。
コンスタント・ランバート: バレエ「ロミオとジュリエット」、「ポモナ」、管弦楽のための音楽*、疫病王(ロンド・ブルレスカ)**
ノーマン・デル・マー指揮 イギリス室内管弦楽団
バリー・ワーズワース指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団*
サイモン・ジョリー指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団**
1977年7月、ロンドン、キングズウェイ・ホール ほか
Lyrita SRCD 215 (2007)
*ランバートもまた大田黒が高く買っていた人物。「ロミオ…」は彼の出世作、ディアギレフじきじきの委嘱作でもある。LP時代この演奏を昂奮しながら聴いた憶えがある。改めて耳にすると、フランス六人組風の小洒落た「いかにも」な音楽なのだが。
締め括りはぐっと愉しく気楽にいこう。英国のモダン・サロン・ミュージック、二台ピアノの音楽だ。
ジョン・カーマイケル: パペット序曲~「パペット・ショウ」より
パーシー・グレインジャー: カントリー・ガーデン
ヴォーン・ウィリアムズ: グリーンスリーヴズによる幻想曲
ウィリアム・ウォルトン: ポピュラー・ソング~「ファサード」より
ウィリアム・ウォルトン: タンゴ=パソドーブル~「ファサード」より
ジェレミー・ニコラス: クワイエット・ピース 第一番
マデリン・ドリング: リリバーレロによる幻想的変奏曲
フランク・ブリッジ: 横丁のサリー
エリック・コーツ: バイ・ザ・スリーピー・ラグーン
ウィリアム・ウォルトン: オールド・サー・フォーク~「ファサード」より
ハワード・ブレイク: スロウ・ラグタイム
ハワード・ブレイク: フォーク・バラッド
ノエル・ゲイ: ランベス・ウォーク
シリル・スコット: 蓮の国
パーシー・グレインジャー: リスボン
パーシー・グレインジャー: 元気な若い船乗り
パーシー・グレインジャー: 迷子の淑女がみつかった
ウィリアム・ウォルトン: スイスのヨーデル唄~「ファサード」より
ウィリアム・ウォルトン: ポルカ~「ファサード」より
コンスタント・ランバート: シエスタ~「三つの黒人の小品」
パーシー・グレインジャー: ストランド街のヘンデル
ピーター・ウォーロック: パヴァーヌ~「カプリオール組曲」より
パーシー・グレインジャー: 英国円舞曲
ベンジャミン・ブリテン: 悲歌風マズルカ
グスターヴ・ホルスト: 木星~組曲「惑星」より
二台ピアノ/デイヴィッド・ネットル+リチャード・マーカム
1992年5~6月、バーミンガム
IMP 30367 00172 (1993)
さあそろそろ眠たくなってきたので、続きは来年に聴くとしよう。皆さん、どうかよいお年を!