風呂からあがって、寝る前にちょいと一服とヴェランダに出ると、満天の星空。上弦の月が沈み、黒々とした夜空に星々が驚くほどくっきり望まれる。今夜は上空がよほど澄んでいるのだろう。
オリオン座はすでに西の空に傾きかけ、その上方には見慣れない赤い星が煌々と輝く。あれは火星だろう。お蔭で全天一の明るさを誇るシリウス星もちょいと見劣りがする。小生の視力だと普段はあまり定かでないオリオンの小三ツ星も、牡牛座の「すばる星団」も今夜は実によく見える。
それにしても凍えるほどの寒さだ。そろそろ引っ込もうと思ったら、ハラリと流れ星。しばらくするとまたひとつ、ハラリ。なにやら流星群が接近しているらしい。
冬の夜空は明るい星が多いので豪華だが、天の川は実に暗く(銀河系宇宙の外縁方向に当たるためという)、夏空に較べると背後の空間が深々とした闇色を呈する。
オリオン座のベテルギウス、小犬座のプロキオン、大犬座のシリウス、この三つの一等星がかたちづくる(ほぼ)正三角形は「冬の大三角」と呼び慣わされ、この季節ならではの天空の雄大な見ものである。その大きな三角形に囲まれた部分には肉眼で見える星がひとつもない、とは小学生の頃に野尻抱影の本で得た知識なのだが、今日しげしげと見ると本当にそのとおりで、見上げているうちに漆黒の闇に吸い込まれそうで怖くなる。
十五分ほど経ったろうか。それから流星はひとつも流れなかった。体の芯まで冷えてしまったので、今夜の即席天体観測はこれにて幕。