俄かに身辺が忙しくなってきた。大急ぎでエッセイを書かねばならぬ。それも英文でだ。そんな大それたことができるのか。不安でいっぱいだ。うまくいけば英国の雑誌に載る。締切が近い。
慌てて麻布台の日本近代音楽館でそのための追加調査。明らかに泥縄である。日頃さぼっていたツケがいっぺんに回ってきた。三時間ほど必死で頁を捲り続け、精も根も尽き果てた。
夕方から水戸芸術館で楽しみにしていたコンサートがある。ほんとうはのんびり鈍行で出かけ、展覧会でも観てゆっくり過ごしてから…と考えていたのだが、そんな次第で、ぎりぎりまで調査をして、上野初の「スーパーひたち」に飛び乗った。車中で少し眠ったら疲れがだいぶ回復。
今日のコンサートは演奏者も曲目も夢のようだ。
水戸室内管弦楽団 第71回定期演奏会
指揮/ジャン=フランソワ・パイヤール
ドビュッシー: 牧神の午後への前奏曲
フローラン・シュミット: 弦楽合奏のための交響曲「ジャニアナ」
ダンディ: 古い様式による組曲 ニ長調 作品24
ビゼー: 劇音楽「アルルの女」より五曲 (原典版)
ルーセル: バレエ組曲「蜘蛛の饗宴」
この演目をみて狂喜乱舞したのは小生だけだろうか。
パイヤールはかつてフランス・バロックの研究者・指揮者として一世を風靡した人だが、並行してフランス近代音楽も少しだが録音していて、どれもたいそう素晴らしかった。とりわけ忘れ難いのは1968年に出たこのLPだ。
オネゲル: 交響曲 第二番
ルーセル: シンフォニエッタ
フローラン・シュミット: 交響曲「ジャニアナ」
(日本コロムビア OS-2095-RE)
小生が高校生の頃、小遣で買った二枚目のLPだから想い出が深い。三曲ともこれで知って鍾愛の曲となったのだ。六年前の2001年6月、パイヤールが水戸室内管弦楽団の招きで来日しオネゲルの第二交響曲を指揮したとき、だから涙が止まらなかった。同じ日に聴いたドビュッシーの「小組曲」(ビュセール編曲版)の匂うような演奏も忘れられない。アンセルメを凌駕する素晴らしさだったのだ。
六年ぶりの来演で今度は「ジャニアナ」だ。もう天にも昇る心地がする。
誰も知らなかろう。それもそのはず、パイヤールのLPが出て四十年、小生の知る限り、その後は全く録音されていない。もちろん今夜が日本初演のはずだ。
開場とともに入場すると、すでにハープの吉野直子さんがチューニングに余念が無い。そういえば六年前の「小組曲」のハープも吉野さんだったなあ。世界屈指のハーピストを擁するオーケストラなんて世界広しといえどもここにしかない。水戸は贅沢な場所なのだ。
(まだ書きかけ)