1975年4月レコード・デビューを果たしたバンド、シュガーベイブは、どこかしら間違った時代に出現してしまったような居心地の悪さを漂わせていた。少数の理解者から熱烈に支持される一方で、大半のロック・ファンからは冷たい視線を投げかけられ、余所者扱いされていた。
ちょうどこの年、荻窪にアパートの一室を共同で借りていたわれわれは、歩いていけるのをいいことに、オープン間もないライヴスポット「荻窪ロフト」に足繁く通ったから、そこでシュガーベイブの生演奏に接する機会が何度もあった。渋谷の「ジァンジァン」でだったか、彼らはユーミンとジョイントしたこともあったし、他の多くのロックバンドとともに日比谷の野音の舞台に立つのも目撃した。
そんなわけで、仲間うちでも山下達郎の甘い声にぞっこん惚れ込む女性たちが続出し、それを横目で見ながら、「あんな軟弱な奴らのどこがいいんだ」と目の仇にする者も少なくなかった。
忘れられないのは、筋金入りのロック・フリークだった友人が、ちょっと揶揄するように、シュガーベイブを「ダウンタウン・ウキウキ・バンド」と渾名したこと。
う〜ん、巧い! まさしく天才的な評言だ。座布団十枚!
あえて野暮な註釈を加えるなら、ちょうどその頃、宇崎竜童が主宰する「ダウンタウン・ブギウギ・バンド」が人気を集めており、それとシュガーベイブのデビュー・シングル曲「ダウンタウン」、さらにその歌詞の一節にある「ウキウキ」を瞬時に結びつけた呼称だったのである。
小生はといえば、金子マリ&バックスバニーやソー・バッド・レヴューに強く惹かれる一方で、ユーミンやシュガーベイブにも親しみを覚えるという、どっちつかずの中間派であり続けたと思う。
かつて中学生時代に60年代ポップスに熱中した過去をもつ者としては、それがロックであるか否かの議論はひとまず措いて、「愉しみとしての音楽」を標榜したかったのだ。
ところで、と、ここからが本題なのだが、シュガーベイブの「ダウンタウン」を聴くたびに、小生はもうひとつ別の同名曲、英語で唄われた "Downtown" を思い出さずにはいられない。日本語のタイトルを「恋のダウンタウン」という。1964年11月に発売され、世界を席捲する大ヒットになった不朽の名曲である。
When you're alone
And life is making you lonely,
You can always go downtown
When you've got worries,
All the noise and the hurry
Seems to help, I know, downtown
Just listen to the music of the traffic in the city
Linger on the sidewalk where the neon signs are pretty
How can you lose?
The lights are much brighter there
You can forget all your troubles, forget all your cares
So go downtown,
Thing'll be great when you're downtown,
No finer place for sure, downtown,
Everything's waiting for you
小学六年生だった小生はラジオで繰り返し聴いて、ただ音として覚えてこの歌を口ずさんだ。こうして書き写していて、四十数年後ようやくその意味するところを知った。なんという能天気な歌詞であろう。
(明日につづく)