原稿書きのはずが、往生際が悪くいつまでもぐずぐず。書き出しを考えながら、昨夜に引き続き、買ってきたCDを一枚ずつかける。
ベートーヴェン: 序曲集
~「フィデリオ」「エグモント」「コリオラン」「レオノーレ」第三番 「献堂式」
ヨーゼフ・クリップス指揮 ウィーン祝祭管弦楽団
1962、ウィーン
Preludio PHC 1123 (1987)
*端倪すべからざる実力のわりに、相応のポストに就けず、録音にも恵まれなかったクリップス。彼が「コンサート・ホール・ソサエティ」に残した何枚かのLPも忘却の彼方だ。本盤もそのひとつで、標記の耳慣れぬ団体はおそらくフォルクスオーパーか、ウィーン交響楽団の仮名だろう(あるいは臨時編制か)。力まず騒がず、だが堂々たる風格漂うさすがの仕上がり。
シベリウス: ヴァイオリン協奏曲、メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲
ヴァイオリン=堀米ゆず子
イヴァン・フィッシャー指揮 アムステルダム・コンセルトヘバウ
1988、コンセルトヘバウ、アムステルダム
CBS Sony 30DC 5111 (1988)
*かつて鳴り物入りで喧伝されただろう盤だが、今では捜しにくい一枚。現今の円熟ぶりとは異なるが、若さのみがなし得る爽演の魅力が横溢する。
プロコフィエフ(アブラム・スタセーヴィチ編): オラトリオ「イワン雷帝」
メゾソプラノ=イリーナ・チスチャコーワ、バスバリトン=ジェイムズ・ルサーフォード
朗読=サイモン・ラッセル・ビール
レナード・スラットキン指揮
BBC交響楽団、BBC響合唱団、ウェールズBBCナショナル合唱団
2003、ロイヤル・アルバート・ホール、ロンドン(実況)
Warner BBC PROMS 2564 61549-2 (2004)
*新しい英語ナレーションが付いて、理解し易くなったヴァージョン。常々思うのだが、映画音楽としても、純粋に音楽としても、本作は「アレクサンドル・ネフスキー」より遙かに充実しているのではないか。作曲者自身による演奏会用編曲がないのが悔やまれる。小生もちょこっと覗いた2003年「プロムス」の白眉、プロコフィエフ歿後五十年を劃す素晴らしい献呈演奏だ。
プロコフィエフ: スキタイ組曲「アラとロリー」、交響曲 第五番
ディミトリ・ミトロプロス指揮 ニューヨーク・フィル
1955、ニューヨーク(実況)
AS disc 525 (1989)
*ミトロプロスはプロコフィエフを得意としていたとおぼしい。晩年の正規録音「ロミオとジュリエット」抜粋は歴史的名演だし、第三ピアノ協奏曲の「弾き振り」は彼の十八番だった。この二曲もスマートな流麗とは異なる、剛直尖鋭な同時代音楽としてのプロコフィエフが聴ける。何といっても作曲者の歿後わずか二年なのだ。
エロン・コープランド: 「アパラチアの春」組曲
ゴードン・シャーウッド: 序奏とアレグロ
アルベルト・ヒネステラ: 「クレオール舞曲集」より 序曲
カマルゴ・グアルニエーリ: プロローゴとアリア
サミュエル・バーバー: メデイアの瞑想と復讐の踊り
ディミトリ・ミトロプロス指揮 ニューヨーク・フィル
1954、57、52、58、58、ニューヨーク(実況)
AS disc 543 (1990)
*ついでにもう一枚ミトロプロス。こちらは正真正銘、彼と同時代の、それもアメリカズ音楽だ。正直なところ、苦手な作曲家ばかりだが、ミトロプロスは肩入れしていたのだろう、シャーウッド作品はたぶんこれが初演だし、バーバーの歌劇「ヴァネッサ」をザルツブルクまで持っていった張本人も彼だった。歴史的価値で聴くべき一枚。