暑さ寒さも彼岸までとやら、俄かに秋めいて、そろそろ長袖が似合う日和。
本当はぼちぼち原稿を書かねばならないのだが、どうにも気乗りがしない。家人が墓参りに出かけて不在なのをいいことに、心おきなくCDをかけて過ごす。先日、別棟の書庫でピアノ版バッハをいろいろ発掘してきたので、それを順番に聴く。概ね古色蒼然たる演奏ばかりだが。
前奏曲とフーガ(平均律クラヴィーア曲集 第5番)
半音階的幻想曲とフーガ
イタリア協奏曲
トッカータ ハ短調 BWV911
トッカータ ニ長調 BWV912
二台のピアノのための協奏曲 ハ長調 BWV1061*
ピアノ=アルトゥール・シュナーベル
+カール・ウルリヒ・シュナーベル、エイドリアン・ボウルト指揮 ロンドン交響楽団(* )
1936-38、50(前奏曲とフーガ)、アビー・ロード・スタジオ、ロンドン
EMI Références 7243 5 67210 2 9 (1999)
*早々と前言を翻すが、録音こそ古いものの、これは古色蒼然たるバッハではない。とりわけハ短調のトッカータ。過日聴いたアルヘリッチの清冽な演奏とは別世界、堂々として表出的なバッハがここにいる。このディスクの白眉は息子ウルリヒと組んだ二台ピアノの協奏曲。確信に満ちた足どり、奔流のような推進力。なるほど「バッハは小川 Bach ぢゃない」。
ピアノ協奏曲 ホ長調 BWV1053
三台のピアノのための協奏曲 ニ短調 BWV1063*
フルート、ヴァイオリン、ピアノのための協奏曲 イ短調 BWV1044**
ピアノ協奏曲 イ長調 BWV1055
「音楽の捧げ物」より リチェルカーレ a 6 (フィッシャー編)
ピアノ協奏曲 ヘ短調 BWV1056 (二、三楽章)
ピアノ=エトヴィン・フィッシャー、ローザンヌ室内管弦楽団
+パウル・バウムガルトナー、アドリアン・エッシュバッハー(*)
フルート=エドモン・ド・フランチェスコ、ヴァイオリン=ジョヴァンニ・バガロッティ(**)
1945、48、ローザンヌ
Music & Arts CD 1080 (6CDs, 2001)
*すべて初出の放送録音集成六枚組からバッハばかりを選んで聴く。シュナーベルとはまるで対照的なピアノ演奏。感覚的な魅力をも備えた悦ばしいバッハだ。BWV1053, 1055以外は正規録音がなく、どれも貴重極まりない音源だが、わけてもBWV1056の第二楽章シチリアーナ、その天上的な美しさはどうだろう。
二台のピアノのための協奏曲 ハ短調 BWV1062
二台のピアノのための協奏曲 ハ長調 BWV1061
ピアノ=ターニア&エリック・エドシーク
グラン・リュエ音楽祭管弦楽団
1973、シャンゼリゼ劇場、パリ
Cassiopée 969 188 (1992)
*現役ピアニストのなかでは古風なスタイルを堅持するエドシーク(ハイドシェック)、奥さんとの共演。LP時代にさんざん聴いた懐かしい演奏だ。美しい、美しすぎる!
このあと引き続きミエチスラフ・ホルショフスキが弾いた「平均律クラヴィーア曲集」第一巻(Vanguard)でも聴こうと思っていたら、おや家人が早くもご帰還。鑑賞会はあえなく終了、夕食の支度にかからねばならぬ。