家人の言を信ずるならば、今日は飼い猫のトラの十歳の誕生日なのだという。もっとも、元は野良猫だったのだから、生まれた日が正確にわかるはずがない。そこで、わが家にやって来た日を誕生日と称して祝うのである。
なんでも十年前のその夕方、家のすぐ前の立木によじ登ったまま、喧しく鳴きわめいていたのだそうな。
まだ掌に乗るほどの仔猫で、呼びかけると、ためらいなく、すぐ降りてきたというから、あるいは捨て猫だったのだろうか。
それ以来、ずっとわが家にいる。いつの間にか体重が八キロもある大猫に成長し、どっしり貫禄たっぷりに、あるじのごとく振る舞っている。昨晩は前夜祭と称して、いつものキャットフードの代わりに笹蒲鉾を貰って、狂喜乱舞していた。
四年前からはもう一匹、これも野良猫を拾ったチビ(長じてノビタ)が加わった。
この二匹はえらく仲が良く、雄同士なのに、いつも並んで身を寄せあい、互いに舐めあっている。羨ましいものだ、と飼い主たちはわが身を省みて、そう思うことしきりである。