俄か雨が降り出したかと思うとすぐ止んで、雲間から日が射したりという一日。
こんな日は外出を控えてゆっくりしよう。最近手に入れたCDで未聴だったものをまとめて鑑賞。
"The Sea"
チュルリョーニス: 交響詩「海」
グラズノーフ: 幻想曲「海」
ドビュッシー: 三つの交響的エスキス「海」
エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮 ロシア国立交響楽団
(1993年2月13日、モスクワ音楽院大ホール)
Exton OVCL 00287 (2007)
*かつてTriton という短命なレーベルから出たきりだった演奏会ライヴが再発になった。海にまつわる三曲を一夜の演奏会に揃える趣向はどうやらこの指揮者のお気に入りだったようで、同種のプロを同じ年の11月にオランダのハーグでも試みている(曲目はグラズノーフ、ドビュッシーとエルガーの「海の絵」)。チュルリョーニスの「海」はこの作曲家唯一の大曲だが、茫洋と捉えどころのない音楽。それを真向から堂々と聴かせるスヴェトラーノフの力技に感嘆。
プロコフィエフ: バレエ音楽「ロミオとジュリエット」全曲
ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 ボリショイ劇場管弦楽団
(1959年、モスクワ録音)
Melodya MEL CD 10 00908 (2005)
*ロジェストヴェンスキーの長い録音歴における最大の謎は、彼が「ロミオとジュリエット」をステレオ録音しないこと。ボリショイの俊英としてデビュー間もなく、ウラーノワ主演の映画版『ロミオとジュリエット』のサウンドトラックを指揮したのが1954年。その後モノラル末期に世界初の全曲録音(1959=本盤)を残しながら、そのあと音沙汰がない。「道化師」も「放蕩息子」も「シンデレラ」も「石の花」も録音したのに…。当盤の存在意義は依然として大きい。
シマノフスキ: お伽話の王女の歌、ハーフィズの愛の歌、恍惚たる勤行の歌、ヤン・カスプロヴィチの三つの歌
ロベルト・サタノフスキ指揮 ポーランド国立ワルシャワ歌劇場管弦楽団 ほか
(1986年、ワルシャワ録音)
Koch Schwann 314 001 H1 (1988)
*ポーランド風というよりは無国籍、どことも知れぬ東方への憧れに満ちたシマノフスキの管弦楽伴奏歌曲は、ラヴェルの同種の試みのすぐ近くに位置するものだ。鬱陶しい夏の午後、暑さを忘れて聴き惚れるのに相応しい楽曲だ。
フランセ: バレエ音楽「裸の王様」「夜の乙女たち」
ティエリー・フィッシャー指揮 アルスター管弦楽団
(2004年3月22、23日、ベルファスト、アルスター・ホール)
Hyperion CDA 67489 (2005)
*ジャン・フランセの九つあるバレエ音楽の四番目と五番目。前者はリファールの依頼でパリのオペラ座のため、後者はジャン・アヌイの台本により、ロラン・プティの注文でそれぞれ書かれた。にも拘らず、完全に忘れ去られたのは不当なことだ、と聴きながら思う。フィッシャーは余程フランセと相性が良いのだろう、既出のCD二枚と同じく、水中の魚の如く自由自在に振る舞う。
"A la francaise"
デクリュック: ソナタ 嬰ハ長調 (1942)
デルヴァンクール: 「クロカンブッシュ」(1926)
サンカン: ラメントとロンド (1973)
モーリス: プロヴァンスの絵 (1956)
ケックラン: アルト・サクソフォーンとピアノのための練習曲[抜粋](1942-44)
デザンクロ: 前奏曲、カダンスと終曲 (1956)
クロード・ドラングル=サクソフォーン、オディール・ドラングル=ピアノ
(1999年7月、Danderyd Gymnasium、スウェーデン)
BIS CD 1130 (2002)
*せんだって荻窪での「カフコンス」で聴いたクロード・デルヴァンクールの「クロカンブッシュ」が聴きたくなって購入。この曲とケックラン以外は初めて耳にするものばかりだが、たいそう聴き心地がよい。アンサンブル・アンテルコンタンポランの名手ドラングルの演奏は流石に闊達そのものだ。
"Songs & Piano Music by Edward Elgar"
エルガー: 歌曲集「海の絵」 ほか (全30曲)
アマンダ・ピット=ソプラノ、マーク・ワイルド=テノール、ピーター・サヴィッジ=バリトン
デイヴィッド・オーウェン・ノリス=ピアノ
(2007年2月14、15、16日、コッブ・コレクション、ハッチランズ、イングランド)
Avie AV 2129 (2007)
*生誕百五十年のエルガー年に競って出された組物のうち最も凝った二枚組。ピアノ曲とピアノ伴奏声楽曲という、まるでパッとしない領域にこだわった内容。なんといってもピアノがエルガー遺愛の1844年製というのが凄い。このピアノに向かって作曲した(そう楽器に自筆書き込みがある)「海の絵」を当のピアノの伴奏で聴くという贅沢! 正直言って声楽陣は今ひとつだが、許せる気になる。チェロ協奏曲第一楽章のピアノ独奏版など初出アイテムも興味深い。