新着CD特集(?)の四枚目は昨日届いたばかりの頂き物。またしても評論家の平林直哉さんから頂戴した。出来たてホヤホヤのCD‐Rだ。
ヨハネス・ブラームス: 交響曲 第4番*
リヒャルト・ワーグナー:「ローエングリン」第三幕前奏曲、「ニュルンベルクの親方歌手」第一幕前奏曲、「タンホイザー」序曲、「ワルキューレ」より ワルキューレたちの騎行
(収録:1955年3月26日*、1953年2月13~22日)
ポール・パレー指揮 デトロイト交響楽団
Serenade SEDR 5003
小生がライナーを書かせてもらったデトロイト響との「田園」「第七」(Grand Slam盤CD)、そしてコロンヌ管との「幻想」(Serenade盤CD‐R、感想は
→ここ)に続く、平林さん製作のポール・パレー覆刻プロジェクト第三弾だ。
今回の演奏はいずれも「田園」「第七」同様、パレーのデトロイト就任まもなくのモノラル録音。それゆえ、マーキュリーから正規の覆刻CDが出ていない。しかも、これは再三述べているように、指揮者パレーの真の黄金時代は1950年代前半にあるらしいから、最上の演奏が期待できよう。小生はすべてLPで架蔵しているが、実際に音にするのは実に久しぶりだ。
ブラームスが始まってしばらくは、あまりの音色の明るさに違和感が拭えまい。でもしばらくすると、パレーの剛毅と気迫に胸打たれるはずだ。この演奏がステレオで残されなかったのは返す返すも残念だ。マーキュリー社は1955年の途中でステレオ収録を開始するので、パレーの場合、春のセッション時のこのブラームスと、ラヴェル「スペイン狂詩曲」、イベール「寄港地」(ともにブラームスの前日、3月25日収録)はモノラルのみで残された。ラヴェルとイベールは後年ステレオ再録音(1962)のセッションがもたれたが、ブラームスは遂に再録なし。
ともあれ、名匠ポール・パレーがわれわれに遺した生涯唯一のブラームスを心ゆくまで味わおうではないか。
併録のワーグナーも貴重だ。パレーは1930年代、パリのオペラ座でワーグナーの楽劇の上演指揮に邁進した輝かしい過去をもち、そのワーグナー演奏には揺ぎない自信と確たるバックボーンが具わっている。
彼がデトロイトと遺したワーグナーはすべて声楽抜き、序曲や前奏曲、あるいは「森の囁き」や「魔の炎の音楽」などに留まるが、実にどれもこれも端倪すべからざる演奏だ。今回覆刻されたのはそのうち1953年のセッションから四曲。いやもう、有無を言わせぬ力技である。試しに「ニュルンベルクの名歌手」の前奏曲をお聴きになるとよい。このひたむきに音楽を前進させる強靭な力、それこそがポール・パレーの真骨頂なのだ。ちなみに、これらの演目にステレオ再録はない。
LPからの所謂「板起こし」ながら、ブラームスの第二楽章が少し歪むものの、見事な音質でパレーを甦らせた平林さんの労苦と情熱を多としたい。