一昨日、ポストを覗いたら畏友・平林直哉さんからの小包が届いていた。
中味は彼が主宰する Serenade レーベルの新譜CD-R。先日、彼からの電話で「出来上がったらすぐ送るから」と告げられていた。ご恵贈いただき光栄である。
ベルリオーズ: 幻想交響曲*
ラヴェル: ラ・ヴァルス
フォーレ: パヴァーヌ
ポール・パレー指揮 コンセール・コロンヌ管弦楽団(*)、デトロイト交響楽団
Serenade SEDR 5001 (2007)
これは第一級の掘出物だ。パレーの「幻想」はデトロイト響との1959年ステレオ録音が名盤の誉れ高いが、ここで聴かれるのはその九年前、1950年12月4・6日にパリのプレイエル楽堂で収録された米Vox盤LPからの覆刻とのこと。このLP自体、きわめて探しにくい稀少盤である。
さっそく聴いてみると、これが途方もない演奏である。単刀直入、一気呵成に進める流儀は59年盤と瓜二つなのだが、なんというか、もっと覇気があって、推進力が凄まじい。もう誰も止められない、という迫力だ。これは以前パレーの「田園」のCDの解説を書きながら感じたことなのだが、おそらく指揮者パレーの絶頂期は1950年代前半にあり、モノラルという短所に目をつぶれば、この時期の録音こそ珍重さるべきではないのか。しかもこれは戦前から戦中にかけてパレーが手塩にかけたコロンヌ管弦楽団との戦後の最初にして最後のセッションなのである。オーケストラのアンサンブルも悪くないし、木管が奏でるのは紛れもないパリの音だ。
あとの二曲は1953年12月7日の収録。Mercury によるパレーのデトロイト録音はステレオ期についてはすべてCD化されたものの、ブラームスの「第四」、フランクの交響曲と「プシュケ」、フォーレの「ペレアスとメリザンド」、ルーセルの「蜘蛛の饗宴」などのモノラル演奏が未覆刻のまま放置された形である。その欠を補う意味で、今回の二曲の覆刻はたいそう意義深い。とりわけフォーレの「パヴァーヌ」はステレオで再録されなかったので貴重である(晩年のライヴ録音は残されている)。「ラ・ヴァルス」もゾクゾクするような演奏だ。
いつもながら感心するのは、平林さんの覆刻技術の確かさ。よほど状態の良い盤を手に入れたのだろう、半世紀前の音とは思えぬ鮮明さで壮年期(長生きしたので七十でも壮年だ)のパレーが眼前に甦る感が強い。
いずれ近日中に市販されることだろうが、その暁にはポール・パレーを愛するすべての人にとってまたとない贈り物となるであろう。絶対的にお奨め。
付記)
念のため Serenade レーベルの問い合わせ先を書いておく。
cnh*wat.att.ne.jp (*はアットマークの謂)