オーケストラ・ニッポニカ 第11回演奏会
深井史郎作品展 生誕100年記念
2007年3月25日(日)
14時30分開演 紀尾井ホール
パロディ的な四楽章 (1936)
十三の奏者のためのディヴェルティスマン―宮沢賢治の童話による― (1955)
「平和の祈り」四人の独唱者及び合唱と大管弦楽のための交声曲 (1949)
オーケストラ・ニッポニカ
指揮/本名徹次
独唱/星川美保子(s)、穴澤ゆう子(a)、谷口洋介(t)、浦野智行(bar)
合唱/東京クラシカルシンガーズ
昨日のエントリーを読んだ方は、あれっと思われたかもしれない。深井史郎の「パロディ的な四楽章」だったら聴いたことがあるぞ。CDで簡単に手に入るじゃないか、と。
なるほど、たしかに廉価盤レーベル Naxos の「日本作曲家選輯」シリーズには深井史郎の管弦楽をまとめた一枚があり、そこにはこの曲が含まれている(2004録音)。LP時代には山岡重信指揮による同曲の名演奏(1972録音)があり、これもCDで聴くことができる(ビクター VICC-23007)。われわれは皆、このふたつの録音を通して深井の代表作を知り、その先見性や卓越した仕事ぶりを云々してきたのである。
ところが、である。実はこれは真正な「パロディ的な四楽章」ではなかったのだ。
1937年4月にローゼンシュトックの指揮で初演された同曲は、その翌年1月に作曲者自身の指揮で放送され、42年12月にローゼンシュトック指揮で再演されたきり、楽譜が行方不明になってしまっていた。戦後何度かなされた実演も、二度のレコード録音も、「パロディ的な四楽章」そのものではなく、その前身にあたる五楽章からなる旧作「五つのパロディ」の四つの楽章を寄せ集めただけの代物だったのである。
少し整理してみる。
「五つのパロディ」
1933年作曲/1934年5月7日放送初演(作曲者指揮)/二管編成
1.Modéré ─ Un peu plus vite: à Manuel de Falla
2. Vif et rythmé: à Igor Stravinsky
3. Très lent et triste: à Gian Francesco Malipiero
4. Simplement, assez lent: à Maurice Ravel
5. Animé: à Bela Bartok
「パロディ的な四楽章」
1936年作曲/1937年1月29日初演(ローゼンシュトック指揮)/三管編成
1. Assez lent: à Manuel de Falla
2. Vif et très rythmé, avec humour: à Igor Stravinsky
3. Assez lent: à Maurice Ravel
4. Très animé: à Albert Roussel
つまりこういうことだ。五楽章あった旧作から、不出来だった「第三楽章」(マリピエロに献呈)をカットして四楽章制とし、細部の構成を手直ししたうえオーケストレーションをやり直し、楽器編成を拡大したというわけである。ただし全体の長さはほとんど変わらないというから、残りの楽章を時間的に多少拡大したのであろう。
実は重要な変更がもうひとつある。最終楽章の献呈先の作曲家(つまり、パロディのネタ元)がバルトークからルーセルへと書き換えられたことである。
2004年になって、「パロディ的な四楽章」の自筆譜が奇跡的に再発見された。05年にはその自筆譜の影印本が全音楽譜から出版された。そして今日、「正真正銘」この曲の久方ぶりの演奏がオーケストラ・ニッポニカによって行われたという次第。前回の演奏は1942年12月9・10日だったので、実に64年と三か月ぶりの復活ということになる。
これを歴史的快挙と言わずしてなんと形容しよう。
(明日につづく)