今にも降り出しそうな空を気にしながら、都営新宿線で江戸川区船堀へ。この街に来るのは三十二年ぶりだ。好きだった彼女がこのあたりに住んでいて、何度か散歩した思い出がある。駅前で周囲を見わたしてみるが、まるで見覚えがない。無理もない。そもそも当時は駅すら無かったのだ。
そんな他愛のない感慨に耽っていたら、コンサートが始まった。SHOBI サクソフォーン・アンサンブル第19回定期演奏会である(@タワーホール船堀)。その名のとおり、サクソフォーンのみで構成された合奏団体。専門学校「東京ミュージック&メディアアーツ尚美」のサックス専攻生によるアンサンブルだ。
サクソフォーンばかりのアンサンブルとは珍しい。そもそもサクソフォーンには、ソプラノ、アルト、テナー、バリトン、バスの種類があって、ヴァイオリンやフルートのような高音からコントラバスやチューバのような低音までカヴァーできる、ってご存知? 寡聞にして小生は初めて知った次第。
編成は四重奏から大編成までさまざま、曲目もモーツァルトから現代まで、変化に富んだプロで飽きさせない。それより何より、学生たちの技量は大したものだ。
今日の最大の聴きものは、休憩後のプロコフィエフのバレエ「ロミオとジュリエット」第二組曲。原曲はもちろん大編成のオーケストラなのだが、これを36名のサクソフォーン合奏(&打楽器、ピアノ、ハープ)用に編曲したヴァージョンで演奏する。
光彩陸離たる管弦楽曲を同系音色のサックス・アンサンブルに移しかえるのだから、ちょっと苦しいところもある。フルートやオーボエの主題がヴァイオリンへと引き継がれるような箇所は、どちらもソプラノ・サックスが奏するわけで、変化に乏しくなるのは致し方ない。とはいえ、この編曲はよくできていて、ユニゾンで鳴らすところでは充分にプロコフィエフらしく響いていた。途中からは違和感はどこかに消え、ひたすら「ああ、いい音楽だなあ」と胸を熱くしつつ聴き惚れた。
思えばこの組曲、生で耳にするのはこれで二度目ではないだろうか。1973年6月にムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルの透徹した演奏で聴いて以来だと思う。
今日のサクソフォーン版「ロミオとジュリエット」の編曲者は、徳備(とくび)康純さん。というよりむしろ、あの素晴らしきブログ「鎌倉スイス日記」の Schweizer_Musik さん、といったほうが通りが良いだろう。帰りしな、初めてお目にかかり、ちょこっとご挨拶できて幸せだった。
地下鉄とJRを乗り継いで帰宅すると、叩きつけるような凄まじい驟雨。春の嵐と相成った。
(パソコン不具合で、アップが遅くなってしまった)