ここ二、三日は寒気がえらくこたえる。二月なので当然なのだが、体がすっかり暖冬モードになってしまったのだろう。
夜風に吹かれながら東京から帰宅すると、ポストに書籍小包が二つ。いずれも先週末「日本の古本屋」のサイトから注文しておいたものだ。
包みを解いてまず読み出したのは、高杉一郎の『シベリアに眠る日本人』(岩波書店「同時代ライブラリー」93、1992)。
先に『征きて還りし兵の記憶』を再読したとき、『極光のかげに』『スターリン体験』に続く高杉さんのシベリア抑留体験記の第三作とうっかり記したが、調べてみたらその前にもう一作あることが判明したので、それではと、さっそく発注した次第。
新書版変形サイズ二百頁ほどの小著なので、一気に読了。1974年、そして91年と二度にわたってシベリアの地を再訪した際の体験を綴った "Siberia Revisited" とでも呼ぶべき著作である。他の本に再三登場するブラーツクの親切な収容所長アンドレイ・ジョーミンと四十五年ぶりに再会する場面がクライマックスをなす。
シベリア体験そのものについては他の三作でほぼ語り尽くされており、本書はそれらの補遺といった趣なので、最後に読んだのは正解だったかもしれない。静かな執念とも呼ぶべき著者の姿勢はこれら四冊のシベリア体験記に通底している。
さあ、これから二冊目にとりかかろう。沢部仁美『百合子、ダスヴィダーニャ 湯浅芳子の青春』(文芸春秋、1990)。湯浅と中条(宮本)百合子との友愛の軌跡をつぶさに辿った本だ。最晩年の湯浅に取材し、未刊資料を用いて書かれたというが、はたして首尾はいかなるものか。