珈琲の粉を切らしたので午前中ちょっと買いに出たら、粉雪がちらちら舞ってきた。手がかじかむほど寒い。帰り道、少し離れたところにある書庫に立ち寄って、別置してあるCDを一抱え持ち帰ってきた。
もう外出はしまい。雪はすぐやんだが、凍えそうな一日になりそうだから。
今日なんとなく聴いてみたくなったのは、このあいだ花岡千春さんのCDでピアノ曲を聴いたアレクサンドル・タンスマン Alexandre Tansman(1897-1986)のその他の楽曲だ。いろいろと見つかったので手当たり次第に聴いてみた。
ヴァイオリン協奏曲 (1937)
ヴァイオリンと小管弦楽のための五つの小品 (1930)
四つのポーランド舞曲 (1931)
魔女の踊り~バレエ「楽園」より (1931)
ポーランド狂詩曲 (1941)
ベアタ・ハルスカ(vn)、ベルナール・ル・モニエ/ポーランド放送交響楽団
Olympia OCD-685
弦楽のためのトリプティック (1930)
ウラジーミル・ゴルシュマン/セントルイス交響楽団 (1934録音)
Dante LYS LYS-305
ファゴットとピアノのためのソナチネ (1952)
ピアノのための「大西洋横断ソナチネ Sonatine transatlantique」(1930)
木管三重奏のための組曲 (1949)
ファゴットとピアノとための組曲 (1960)
ピアノのためのブルーズ形式の三つの前奏曲 (1937)
ジャン=ミシェル・アレ(fg)、イヴァ・ヴァグレノヴァ(pf)
Arion ARN-55401
弦楽四重奏曲全集:
第2番 (1922)、第3番 (1925)、第4番 (1935)、第5番 (1940)、「トリプティック 」(1930)、第6番 (1944)、第7番 (1947)、第8番 (1956)
シレジア弦楽四重奏団
Etcetera KTC-2017
チェロとピアノのための曲集:
パルティータ (1955)、幻想曲 (1936)、二つの小品 (1931)、ソナタ (1930)、四つの易しい小品 (1940s)
アレクサンドル・ザゴリンスキー(vc)、アレクセイ・シュミトフ(pf)
Etcetera KTC-1209
交響曲 第5番 (1942)
イーゴリ・ストラヴィンスキーを偲ぶ石碑 (1972)
管弦楽のための四章 (1968)
メイル・ミンスキ/チェコスロヴァキア国立フィル(コシツェ)
Marco Polo 8.223379
どれも聴きやすく、なかなか楽しめる。「フランス六人組」の発展形といえばよいのか、すっきりと形の整った新古典主義の楽曲。尖ったところはほとんどないが、響きが鋭敏かつ繊細で洒落ており、決して凡庸な音楽ではない。
タンスマンはポーランドのウッチ(Lodz)生まれ。1919年からパリで過ごし、ラヴェル、ロラン=マニュエル、ミヨー、オネゲル、プロコフィエフらの知遇を得たほか、クーセヴィツキーやゴルシュマンなどの指揮者に作品を認められた。1932~33年、日本を含む極東に旅した。37年フランス国籍を取得。第二次大戦時は戦火を逃れてハリウッドで過ごす。46年フランスに帰国。
両大戦間をパリで暮らした彼は楽壇で顔が広かった。高名な演奏家にも知己が多く、上の楽曲のなかにはシゲティ、カザルス、ピアティゴルスキーのために書かれたものも含まれる。交響曲第5番は同郷の指揮者パウル・クレツキに捧げられている。
第二次大戦後の前衛音楽の趨勢とはかけ離れた作風のタンスマンは、50年代からは次第に傍流へと押しやられ、どちらかといえば不遇な晩年を過ごした。
魅力的なその作品群に光が当てられ、さまざまな楽曲がCDで聴かれるようになったのは、ようやくここ15年ほどの現象であろう。今はつくづく良い時代だと思う。とにかく音にならなければ、どんな音楽であれ存在しないも同然なのだから。
家人が踊りの稽古から戻ったので、うんと熱い珈琲を淹れる。お茶受けは浅草・満願堂の「芋きん」。薩摩芋を練って作ったきんつばだ。家人が昨日買ってきたものだが、これがえらく美味。