今日もついつい昼近くまで寝てしまった。なんだか疲れがたまっているようだ。
小坂忠の『まだ 夢の続き』(河出書房新社、2006)を読了。今月の新刊(奥付では12月30日の発行)で、東京駅構内の本屋で昨日たまたま見つけたものだ。
昨年、狭山の「ハイドパーク・ミュージック・フェスティバル」で、三十年ぶりに小坂忠のライヴを聴いた。かつてティン・パン・アレーを従えて唄ったのと同じ「ほうろう」や「夕方ラヴ」や「機関車」を再び耳にして、もちろん感慨一入だったのだが、ロック歌手を廃業し、カトリックに入信して聖職への道を歩んだ彼の胸中はちょっと計り知れないな、とも感じたものだった。
本書は、生い立ちから音楽仲間との出会い、「エイプリル・フール」「フォー・ジョー・ハーフ」、狭山での米軍ハウス暮らし、ティン・パン・アレーとのツアー、愛嬢の怪我をきっかけにキリスト教に帰依してゴスペル歌手に転身、ついには牧師となるまでを、実に淡々と、率直に語った自叙伝である。
小生の周囲では、名盤「ほうろう(Horo)」(1975)での、あの気障っぽくて恰好いい小坂忠を懐かしむ声が高いのだが、現在の彼の穏やかな歌声や柔和な笑顔もたいそういいものだ、と思う。その両者を繋ぐ三十年間を、忠さんは忠さんなりに誠実に、懸命に生き抜いてきた。この本はその年月の重みを、決して声高でなく物語ったものだ。
巻末の細野晴臣との対談がとてもいい。ちょっと引いておこうか。
小坂 去年、懐かしい狭山でやったハイドパークの細野君のステージ、すごく良かったよ。
細野 あれは僕にも大事な場所だった。大雨が降っていたから大変な思いをしたけどね。
小坂 だけど、けっこう楽しんでたでしょう。
細野 今になってみれば楽しかったけど、あの時はそんなに余裕なかった。でも、ステージに出てみたら、お客さんの雰囲気がすごく良かったから。土砂降りの後の雰囲気とか、あそこでしかない場所、空気だったよね。あんなステージは初めてだし、これからもないだろうし。[…]
小坂 ハイドパークはお客さんと強い連帯感があったよね。
細野 あった。本番までは、すごく緊張してたのに、お客さんの雰囲気に癒されて、僕も安心したんだと思う。[…]
小坂 本当にいいステージだったよ。
細野 忠と一緒に歌った「ありがとう」も、すごいうまくいったよね。お陰で僕は歌うことが楽しくなってきた。今はかなりヤル気が出てきている。歌うことが楽しい。こんなこと初めて(笑)。
この件りを読むためだけにでも、手に取る価値のある一冊だ。
そのあとは散歩と昼寝。休暇をとったという家人とのんびり過ごす。夕方ちょっと外出して、近所のシネコンで「プラダを着た悪魔」を一緒に観る。中年夫婦割引で、一人千円とはありがたい。ちょうど千円分は楽しめた映画だった。千八百円には価しないと思ったけど。