一昨日が満月かと思いきや実は昨夜が満月、今夜はだから十六夜なのだが、煌々と中空で照り映える月を見上げると、やっぱり満月のようにみえる。
用事を済ませたあと、新宿のジュンク堂でいかにも読み応えのありそうな厚冊二点を購入。いずれ感想をしたためたいが、もう少し先のことになりそうだ。
今日の行き帰りの車中で読んだのは、衣笠貞之助の「わが映画の青春 日本映画史の一側面」(中公新書、1977)。久しぶりの再読だが、あまりの面白さに電車を乗り過ごしてしまう。
新派の女形として出発した舞台役者がやがて黎明期の映画に身を投じ、主演を務めるうち、いつしか監督業に手を染める。新感覚派の文学者との交遊から映画革新の夢を抱き、自作を携えてシベリア鉄道で一路モスクワへ。絶頂期のソ連映画の現場を目の当たりにし、プドフキンやエイゼンシュテインと胸襟を開いて語り合う。さらにベルリンでは千田是也の導きで左翼演劇を実見し、ピスカートルやフリッツ・ラングに自作「十字路」を見せて批評を乞う。
衣笠の波乱万丈の青春は、それ自体まるで映画そのもののようだ。
帰宅後はヤッシャ・ハイフェッツのヴァイオリンで「ポーギーとベス」からの数曲を聴く(RCA)。ガーシュウィンのオペラの聴きどころをハイフェッツ自身が編曲したもの。いつ聴いても胸のすくような快演。それでいて泣きたくなるほど切なくなる。ついでフランスの往年の閨秀ピアニスト、モニック・ド・ラ・ブリュショルリ Monique de la Bruchollerie の弾くモーツァルト。協奏曲の20番と23番。噂に違わぬ高貴な秀演である(Doremi)。交通事故でキャリアを絶たれた悲運の演奏家だ。
本ブログも開設してからそろそろ半年。昨日のイーストウッド監督作品の感想が201本目のエントリーだった。よくもまあ毎日欠かさずに書いてきたなあ、と我ながら感心してしまう。書くこと自体が愉しみなのは事実だが、誰かがどこかで読んでくれるからこそ、それが励みになって、こうして続いているのであろう。今後ともよろしくお付き合いいただきたい。