先週の火曜日に引き続き、ロシア絵本コレクションの調査の二日目。昨日の疲れが残っていてちょっと辛かったが、早起きして家人と同じ電車で東京へ。さらにJRと私鉄を乗り継いで郊外の大学を訪れる。雨模様なので駅から十分ほどの道のりが少々しんどい。
十時から調査スタート。前回と同様に、頁を繰りながらメモをとり、一冊一冊を丹念に見ていく。ぴんと張りつめたひととき。無上に愉しい時間でもある。
何冊もの絵本に「ナウカ書房」「ナウカ社」の茶色いシールが貼られている。ナウカとは戦前にソ連書籍の販売を一手に担った輸入業者。今夏に倒産したナウカの前身にあたる会社である。神田神保町にあった店舗には、文学書や社会主義文献とともに、夥しい数のロシア絵本が並べられていて、原弘、柳瀬正夢、中山省三郎ら先端的な若者たちがそれらとリアルタイムで出会う恰好の場となった。1932年に開業し36年に廃業を余儀なくされるまでわずか四年間だったが、日本にロシア絵本がもたらされるうえで、ナウカ社の存在は決定的な役割を果たしたのである。
コレクションは全61冊。うちシールが貼られているのは8冊だけであるが、他の絵本も刊行年度が1930~32年に集中しているところからみて、そのほとんどがナウカ社を経由したものと推察される。すでに調査済みの吉原治良や原、柳瀬らの旧蔵絵本と重複するアイテムが多いのも、入手元が同じであることを強く示唆する。
夕方にはすべての絵本をひととおり見終わった。明日はそれぞれの寸法を計測して、調査は終了となる。
帰り道、新宿で途中下車してディスクユニオンへ。トスカニーニ指揮の「ニュルンベルクのマイスタージンガー」(1937年ザルツブルク実況)と「第九」(39年NY実況)、ユージン・グーセンスの「春の祭典」(c.1959)、ニキータ・マガロフの「謝肉祭」「交響的練習曲」(1969)やらレオニッド&ニーナ・コーガンの「クロイツェル」etc(1978)やらを発掘。これらを少しずつ聴いていくのが、秋の夜長の密やかな楽しみである。